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コンセント/同意のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

コンセント/同意(2023年製作の映画)
3.5
未成年の少女たちとの関係を作品の題材として利用した小児性愛作家ガブリエル・マツネフ。
50歳のマツネフと14歳から1年半にわたり性的関係にあったヴァネッサ・スプリンゴラの同名小説をバネッサ・フィロ監督が、スプリンゴラの協力のもと一部脚色を加えながら、原作の趣旨に沿って映画化。
原題:Le consentement(2023、118分、R15+)

13歳で36歳も年上のマツネフと出会い、14歳になったヴァネッサは、彼の手口に惑わされ真に愛されていると思い込み、彼を盲目的に愛し性的関係を結ぶ。
やがてマツネフとのいびつな関係はヴァネッサの人生に長く暗い影を落とす忌むべきものになるが、当時、若くて純情な彼女にはマツネフとの愛しか見えていなかった…。

~登場人物~
・13歳~18歳のヴァネッサ(映画初主演のキム・イジュラン)
・後のヴァネッサ(エロディ・ブシェーズ)
・ガブリエル・マツネフ(ジャン=ポール・ルーヴ):芸術文化勲章を受賞した有名作家。生粋の小児性愛嗜好者。
・母(レティシア・カスタ):愛に飢え、男にだらしない。アルコール依存。2人の関係を初めは反対するがすぐに容認。
・ユーリ:ヴァネッサに恋する。マツネフとの関係を心配する。
・ナタリー:後釜。

「男はみんなろくでなし。あなたの父もね」

「良心なき芸術は魂の廃墟だ」

「君のためにした努力が、君のためにダメになる」

「あの男は君を利用して搾取している。そいつと別れろ」

「ママの服よ。
大人っぽく、娼婦みたい」

「私が過去になることはない。君も同じだ」

「○○を本という檻の中に閉じ込める」

・視線、愛の言葉、束縛
・小説家のミューズ=「不思議の国のアリス」のルイス・キャロル
・心因性の関節リュウマチ
・アレグラとニール→「日記」
・「バネッサ・フィロの物語」

映画初出演のキム・イジュランが捕食者の毒牙にかかって自分を見失っていく過程や性描写は、か細い裸体同様とても痛々しい。
人気作家が自分の言葉の能力を利用して、もろくて傷つきやすい少年少女たちを惑わせ、輝かしい青春を奪うことは犯罪行為である。
また、この映画は小児性愛者の歪んだ行為が文学の形をとり消費、礼賛されている現実への批判にもなっている。
原作者や製作者たちの思いと同様、少年少女たちがこの映画から人間を見分ける能力を学び、消費利用されないことを願う。

フランス映画祭横浜にて鑑賞。
~監督のコメントから~
「この映画は捕食者の支配のメカニズムも表現している」
「原作ではあまり描かれていない母親の脆さ、立場の複雑さも脚本に加えた」
「未成年が同意を与えることは困難。マツネフはヴァネッサを愛しているのではなく作品に昇華しようという考え。獲物のひとりとしか考えていない。愛の手紙も防衛のために書かせている」
なお、監督は穏やかなやさしいトーンのフランス語を話す。その声の響きが印象に残った。

(参考:性交同意年齢について)
・ 2021年フランスは子どもを性犯罪被害から守るため、性交同意年齢を13歳から15歳に引き上げたようです。
・ちなみに韓国も2020年に13歳から16歳に引き上げ。
・日本は13歳のままです。
・ドイツは14歳。
・スウェーデンは15歳。
・イギリス、カナダ、香港は16歳。
・アメリカは州により16~18歳。
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