竜どん

FEAST -狂宴-の竜どんのレビュー・感想・評価

FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)
3.0
人間の貪欲さと罪深さが焦点のサスペンスかと想像していたが全く違った。言うても日本人と欧米人の情緒は同カテゴリなのだな。距離的に近いのにフィリピンを含めた東南アジア社会の方が文化に隔たりを感じたりする。

基本的には悪人らしい悪人は一人もいない。
事故を起こした本人は慚愧の念に懊悩し、父親は息子の人生を思い我が身を投げ打ち、母親は愛する者の入獄に涙する。救護措置を怠ったものの裏工作をする訳でもなく、判決を受け入れ被害者遺族の生活をも面倒を見る。被害者家族も一家の大黒柱の喪失に打ちひしがれながらも、加害者家族の謝罪の気持ちを受け入れ感謝の意すら表に出す。字に起こすと絵に描いた様な円満解決で感動的ですらある。

…が、何か気持ち悪い。
宗教観の違い、死生観の違い、慣習の違いと言われてしまえばそうなのかもしれないけれど、あんな風に割り切れるフィリピン人の感覚はやはり理解できない。
時折見せる被害者遺族の不穏感はミスリードなのか額面通りの複雑な心境の表れなのか最後まで判断が付かない。ことある毎にクローズアップされるFEAST(ごちそう•饗宴)のシーンが妙に暗示的なのも心に引っ掛かる。
いっそのこと「最後の晩餐」的なラストだったらモヤモヤしなかったカモ。
「赦し」か「報復」か?

むしろ、宴会を催す場合には、貧しい人、体の不自由な人、足の悪い人、目の見えない人などを招くがよい。
ルカの福音書14章13節より


追記
比の交通事故は親告罪なのだな。
被害者(遺族)が訴えなかったら立件すらされないってこと?
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