KAJI77

パーマネント・バケーションのKAJI77のレビュー・感想・評価

4.7
鬼才、ジム・ジャームッシュ監督が描き出した至高のニヒルドラマ、『パーマネント・バケーション』(1980)を鑑賞しました。

不安を煽るかのように聞こえる鐘の音。耽美的でポエミーな語り。Suchmosのボーカルみたいに不自然にひょろ長い肢体の主人公。精神を病んで廃人と化した母親。残酷な戦争で心に傷を負った街。

"孤独にはもう飽きた"
この世の全てに絶望する若者の、その等身大の姿が脳裏に焼き付きます…。大した起伏の無い、モノクロの日常を生きる私達はしばしば、この作品が描き出す様な意味ありげな無感情を無視し、それを認識する事を怖れ拒んでいるのでは無いかと疑いたくなる時があります。少なくとも私は、この実りある虚無感に身を任せる事こそが、忙しすぎる世界で忘却されかけている人間の可能性の、伸びしろそのものだと感じています。

「考え過ぎだ」と言われればそれまでの妄想ですが、監督が本作で映した得体のしれない悲しみについて、生涯をかけて熟考しなければならないという焦燥を感じさせる程、素晴らしい作品でした…!
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