わかうみたろう

ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ デジタルリマスターのわかうみたろうのレビュー・感想・評価

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 ステージに上がるパフォーマーたちの自由な身のこなしが画面内に根付いていて良かった。当時のジャマイカのストリートの風景や社会背景がライブ影像の合間に時折入ってきて、その影像とライブを比較する限りこのパフォーマーたちにとって一番自由でいられる場所が舞台の上なのだなと深く感じた。パフォーマーの一番魅力的な部分をカメラが捉える術がドキュメンタリーだったことが明らかにわかるくらい全てのシーンが熱気に満ちていた。ステージの上で大麻を吸っちゃう感じとかめちゃくちゃカッコイイ。
 
 カメラを構えるだけで充分映画を作れてしまう、と言えるような人物はそうそう居ないはずだが、この映画には何十人もそんな魅力的な人たちが映っていることに驚く。パフォーマーから話を聞くインタビュアーやフェスを準備する人、ステージ上のコーラス隊等パフォーマーを囲む人たちが自然体な雰囲気を出していて、画面に一体感があったことに驚く。そんな場所どこ行っても普通は見つからない。政治も階級もない理想の時空間が、反政府の運動の中に生まれている、そして、それは音楽を奏でることから始まっている。観ている人のエネルギーを体の奥から引っ張ってくるような作品だった。

 また、合間にはいる風景の海のカットに驚いた。何故かというと、よく知っている千葉の海に一瞬見間違えたから。もしかしたら自分の身近なところにも理想の時空間が有る、創れるのではないかとぼんやり思った。