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あとがきのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

あとがき(2024年製作の映画)
4.3
青春映画の傑作だと思う。端役しかもらえない役者と吃音のミュージシャンのシモキタを舞台にした8年間、青春の一ページ。夢への不安や迷いと葛藤をリアルに真摯に丁寧に描いている。(熱くなって長文です)

夢を追いかけ続ける、夢をあきらめる、の二択ではないというメッセージは、とくに進行形の人にはびしびし刺さるんじゃないかな。私はどうしてもこうしたいという夢はなかったけど、目の前のことにがむしゃらになっては完全燃焼して、力尽きるのを繰り返していた。たいていの人がこの道でよいのか?と自問自答して迷ったことはあるはず。

シモキタは早道を教えてくれない大人たちがたくさんいる町。劇中の「アニキ」は何も教えない。でも見守っている。かつての自分を彼らの中に見ているから。

役者のハルタ、ミュージシャンのレオがこの先どうやって生きていくのか、この続きを観たい。それは、『ロッキー』や『Before Sunrise』みたいに、何年かに一度、現実の役者の生き方が反映され、<変わるもの・変わらないもの>をどう表現するか、どう変わったのか、見守っていきたいから。そんな気持ちにさせられた。

大好きな町シモキタの変貌ぶりについて行けていないのは同じで、雨の中を自転車を走らせ、初めてのシモキタエキマエシネマK2が南西口の駐輪場の目の前だったことを知らずに東口駅前(かつての中心地)をさ迷いました。でも、K2上映最終日、舞台挨拶含め、シモキタらしい若い息吹きを感じられてとても嬉しい。

初めての役者さんたちばかりでした。リアルな演技に引き込まれ、濃密な時間を過ごすことができました。すべてがシモキタらしかった。『街の上で』でも書いたけど、長い文化の蓄積の上に今がある。大資本の入らない、実験的でインキュベーターのような街。成功を夢見る若者を鍛え、飛び立つのを見守る街。正解のない街。

心に火が灯りました。

最近、邦画の新しい監督作品に関心が向いたのも何かの縁のような気がしてます。
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