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マイノリティ・リポートのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
4.0
Philip.K.DickのSF小説をSteven Spielberg × Tom Cruiseのタッグで映画化。

2054年のワシントンDCでは犯罪予防局が試験導入され、殺人事件の発生を未然に防ぐ事に成功していた。ある日、過去に幼い息子を誘拐された為、危うい正義感を抱える刑事John Anderton(Tom Cruise)が“三日後に殺人を犯す”と啓示される。


◆SFミステリとして一級品の脚本

直近に視聴したトータルリコールが《記憶》をテーマにした「世にも奇妙な物語」風のテイストだったのに対して、今作は王道のSFミステリ。

《プリコグ》と呼ばれる、予知能力者によって構成される殺人予知システム(人道的にどうなのとかは置いといて)を肝に、司法と利権が絡んでくるストーリー。犯罪予知を隠れ蓑として巧妙に利用するトリック。貧困問題や人柱救済の副題。近未来を舞台に展開される作品でもわかりにくさを感じさせない。

ただ、突発殺人=赤球の設定は不要だったんじゃないかなーと思う。Johnの殺人予知は木目球だったけど、現場に突入するまで殺意は生じなかったわけで。突発殺人と計画殺人の線引きも曖昧だろうし、《殺人を仕組まれた》事を強調する意図があったとしても要らなかったんじゃないかなー。

Danny(Colin Farrell)の殺害が予見されなかった事も違和感。あれこそ赤球がポロっと出てきても良かった案件じゃないか?《黒幕の殺人が予知された》瞬間チェックメイトだから仕方ないけど。


◆ Philip.K.Dickの描く近未来

トータルリコールに続いて視聴した今作も、未来の世界が描かれる。車が電磁ドライブしているような描写から、今作の世界観は原作者によるものでしょうか。(原作未読なもので…。)

犯罪予防局のタッチレススクリーン、家庭用ホログラム、未来型レクサス等、印象的な描写が多い中で、取り分け印象的なのが《網膜スキャン》による生体認証での管理社会。

GAFAを筆頭にクッキー情報の取扱が厳格化した昨今の現状を勘案すると、便利さと共に末恐ろしさを感じる。市中に張り巡らされたカメラで網膜スキャンされて、個別に広告が打ち出される。クッキー情報×中華風監視社会の上位互換ダブルパンチじゃないですか怖。プライバシー度外視なスパイダーとか云う強制網膜スキャニングマシンといい、マイルドなディストピアですね。


◆Spielbergの描く世界観

Tom Cruise演じるJohnが逃走を図るアクションシーンは見応えあり。

オートマチックな自動車製造ラインに巻き込まれながら、組み上がった自動車の運転席からドヤ顔ドライブはインパクト大!

警官隊に追われながらアパートへ逃げ込み、無関係の住民宅を壊しながら突き進んでいくカットも、Philip.K.Dickの強烈な世界観の中でSpielbergらしさを感じることができる一連のシーン。



2021/06/30

BS放送で再視聴。

ノーカット版を観て《Danny(Colin Farrell)の殺害が予見されなかったのは何故か》しっかり理解できました!
プリコグの要が抜けていて、予知機能が停止している期間だったからなのね!

いやぁ上手い事出来てたんだなぁ。
ラストの大ボスがこけたのって完全に自分のケアレスミスだった訳ですね。