ぜにげば

ULTRAMAN: RISINGのぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

ULTRAMAN: RISING(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

序盤のこの作品はどういうものなのか探る段階で不満はあったけど、結果的にはかなり面白かった。

かなり序盤にNHKのロゴがそのまま出てかなり驚いた。
作中で何回も現実に存在する企業のロゴが出てくるけど、「スタンド・バイ・ミードラえもん」よりもやらしさが控えめに感じた。
何故なのかははっきりとは分からないけど、多分画作りのクオリティの差なのかなぁと。夜のネオンっぽい感じとか、ウルトラマンの光沢のある質感とマッチしてて、その中にロゴが溶け込んでた印象だった。

怪獣の子供を育てることになり、親子愛を学んでいく家庭は単純だけど楽しかった。
子供を授かる前段階で最善は尽くすべきだけど、結局子供が出来てから初めて大人を知るんだなと。
まあ主人公の性格の変貌ぶりはちと極端すぎる気もするけど。

ミナがちゃんと可愛いし、最終的に生みの親の怪獣と、分かり合えたおじいちゃんと4人で家族になって怪獣島に言ってる感じがすごく素敵だった。
元の親に返さなきゃ…みたいなベタな葛藤話にならないのが素晴らしい。

アクションシーンも見所満載で、普通にスパイダーバースに近い凄みを感じた。
かなりサプライズ。

要素がてんこ盛りなのも面白かったな。
大谷松井の名前は出るし、多分イチローの構え、初音ミク、魚x3の歌、アキラ風のバイク、マリカー、日本語の歌、アイアンマン3ぽい襲撃のされ方、ラスボスのパシフィック・リム感、クライマックスの「シュワッチ!」、これでもかと詰め込んでてめちゃくちゃ面白かった。

最後に不満も書くと、育てることになるまでの主人公の性格があまりにもアメリカ人すぎる。
子供の頃両親と和気藹々と遊んでた感じは日本の子供っぽいのに、育ち方があまりにもアメリカン。
途中で境遇的にアンチ日本的な考え方になったのかなと思えたりしたけど、問題はここから。
記者会見での「大谷には言わせとけ」というセリフが意味わからなかった。
大谷翔平が煽るようなこと言うか!?意味がわからない。典型的で強気なアメリカ人っぽいことを大谷の名前に当てはめるのめちゃくちゃ気持ちが悪い。
吹き替えだと「大谷のことは好きなように言えばいいですよ」だった。
吹き替え担当の人も思うところがあったのかな。
主人公以外の日本人キャラの日本人らしさのリアリティがあったのなら、主人公の絵に描いたようなアメリカ人的性格も意味を持つと思うけど、そこの詰めが甘いのが本当に致命的。
しかも大谷なんて向こうで散々インタビューを受けて誠実な人間なのは知れ渡ってるはずじゃないのか?
それともあれか?一平か?彼が巧妙に印象操作してたのか?
例の報道が出るまでは敏腕翻訳者として有名よね?
カクの造船技術も嘘だっていうの?
もうメリー沈めちゃったよ…。

まあ冗談はこのくらいにして。
僕が何か勘違いしてて解釈が間違っている可能性もある。
ただこれだけじゃない。
それはキャッチャーの「日本式は無理か」ってセリフ。これもリアリティがない。
「日本野球に対する敬意が必要だ」っていう浅はかな慮りがまずあって、メジャーに挑戦してきた日本人選手に対して挑発するとするならば「メジャーじゃ通用しねぇよ」ってセリフが出てくるから、日本野球の立場を上、即ち逆の立場とした場合こう言うんじゃないかと雑に推し量った結果「日本式は無理か」ってセリフになったんだろう。
日本のリーグが明確に世界一になったって設定ならまだいい。もしかしたらそういう設定なのかもしれない。文明も現代よりはるかに進んでるし。
しかしそうだとしても最初の大谷の件が効いてるので、どちらにせよ日本人の描き方がガサツなのは間違いない。

日本と無関係の作品でこういう描かれ方をしていても、違うなとは思うけどまあ許せる。
ただ今作は日本のウルトラマンの名を冠する作品なわけだから、日本っぽさは大事にして欲しかった。
個人の感想だけど、ただ治安が悪くて野蛮なだけなのに、トラッシュトークを「戦略だ」と正当化したり、「積極性がないと通用しない」と論点をズラしたり、まるでそれ自体が実力を得るための必要条件かのように騙ったりするアメリカの傲慢さが大嫌いなのでどうしても許せなかった。(全員がそうじゃないというのは百も承知)
「必要条件じゃない」と証明するために、後に先駆者として語られるはずの現在の挑戦者が必死に開拓していっている最中なんだが?そこにシビれる憧れるんだが?

ここまで私怨全振りのレビューは初めてかもしれない。
挑戦するアスリートに対する尊敬の念が強すぎるのも考えものか。
それにレベルの低いやり取りではあると思うけど、トラッシュトークしてる選手同士めっちゃ仲良しってパターンも少なくないし、トラッシュトークの中にも質の違いがあるからこれも一纏めで語れないけど。
ハイライトしか見ないミーハーのくせに何をヒートアップしてるんだ俺は。
あえて自分に反論すると、傲慢さに対する嫌悪は、治安がいい場所に生まれてる人にのみ許される、幸せ者の特権だってことかな。

つらつらと書いたけど、ミナ登場以降は全く気にならなかったし普通に面白かった。
書きながら序盤のことを思い返して止まらなくなった。
自分の感想を有耶無耶にしなくて済んだのはポジティブに捉えるべきかな。
主人公の人格が最初から成熟してる次回作はもっと面白そうで楽しみ。期待大。
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