歌うしらみがおりました

毒娘の歌うしらみがおりましたのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
3.5
やはり内藤瑛亮、本作でも体制への反抗を描いている。今回の体制は家父長制だ!…ってゆー話はしゃらくさいからやめる。

まずちーちゃんを端から超自然的な存在として描く気がさらさらないのが好印象。冒頭の空き家に忍び込んだカップルの男性に馬乗りになる赤い服を着た少女のモサモサ感、佐津川愛美を捉えたカットの向こうで塀に手をかける赤い服を着た少女のモタモタ感。そこには常に生身の肉体が意識される。そして、電話で仕事を断る佐津川愛美の奥にチラリと映る植原星空に、ちーちゃんの悪意のようなものが伝播されたことが認められる。植原星空によって切り裂かれた掛け布団から舞い上がる羽毛→少女二人が歩く河原を舞う冠毛。壁や布団に刻まれる✕→口を閉ざすようなバッテンの仕草。

ダンサーの女の子に蜂蜜を投げつけて、蜜蜂を突撃させるアイデアも面白かったし、蜜蜂に襲われた女の子が転倒するとカメラもコテッと横になるアイデアもなんだか不謹慎で楽しかった。

はっきり暴力を受けた翌朝、佐津川愛美が「堕ろす」と宣言するシーン、窓が空いていてカーテンがヒラヒラと揺れている。もうその場にいなくとも、ちーちゃんという存在はこの家族の中に侵入しているのだ。

本作で一番恐ろしかったカットは、ダンサーの女の子が植原星空に「ちーちゃんと付き合っちゃ駄目」的なことを言った直後の二人の顔面で画面を埋め尽くしたカット。あの圧迫感は他ではあまり見たことがなくて怖かった。