"箱を開ける"という動作にちゃんとハラハラさせられたから成功していると思う。この映画は。
最後に最も重要なアイテムであったロッカーの扉を"開けて"終わるのも気が利いている。
そういう綺麗に環を閉じる試みとしては、主人公である満島ひかりの退場カット。『ブリッジ・オブ・スパイ』のトム・ハンクスばりのドヤ感で爆睡しているのだが、初登場カットは電車で寝ている満島ひかり。この行って帰ってくる感は好感が持てるし、この満島ひかり初登場カットとネクタイを巻く岡田将生(岡田将生イケメンすぎ)の初登場カットは面白い映画を作るぞという気概を感じでかなり良かった。
その一方で、上記も含めて脚本に映像が拘泥されてしまっている印象も持った。
例えば、最初の爆破シーン。お話の仕掛け上意味があるとは言え、最初に部屋が赤く燃えてから爆発するんじゃなくて、ワンカットで不穏な静寂を作ってからいきなり爆発した方がインパクトがないか。しかもそこからいたずらにカットを割るのでメリハリがなくなっている。(と思ったが、かきながらこのシーンのつまらなさは脚本というより撮り方がヘタクソなだけかもなと思った。)
あとはディーンフジオカがジムで仰向けに寝転がるシーンも、ご丁寧に中村倫也のカットを挟むんじゃなくて、落下した中村倫也を捉えた俯瞰ショットと同じ構図でディーンフジオカを捉えるだけの方がスマートではないか。
爆弾が12個か11個かみたいな件や満島ひかりや宇野祥平が犯人なのでは?みたいなやっすいミスリードもウザい。
そもそも映像の質感や照明が安っぺぇってのは目を瞑るとしても、阿部サダヲがドライバーたちに朗報を伝えるカットで日陰から日向に歩いていくとか影を使った演出を多用しているくせに、気を抜くと取るに足らないカットで宇野祥平が自動車の影からヌッと姿を現して無意味な緊張感を感じさせたりして、やるなら全てのカットに気を配れよと思った。
あとはアイツが犯人だ!ってなってからのパートが絶望的につまらない。無駄にライド感のあるグネグネカメラも影を潜め、人間が特に面白くもないふんわりした道徳観や推理を力んだ表情で発表し合うだけ。アメリカで満島ひかりに思いを伝えるクロースアップ~バストショットも画面に余白が多すぎてちんちくりん。
ラストカットも最悪。他人に説教こく前に映画を面白くしてくれ。満島ひかり、岡田将生といくらでも綺麗に終われるタイミングがあったろう。
あと劇伴がうるさすぎ。ってのは言っても詮無い話か。