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マリア 怒りの娘のコマミーのレビュー・感想・評価

マリア 怒りの娘(2022年製作の映画)
3.8
【少女が見つめる残酷な世界】



※ぴあ様のオンライン試写会での鑑賞。尚、感想はぴあ様の「マリア怒りの娘」の作品ページにも短めに記載→ https://lp.p.pia.jp/event/movie/313190/index.html





北はホンジュラス、南はコスタリカに挟まれて所在している中米の国:"ニカラグア"。ここは長らくソモサ将軍による独裁政権や度重なる内戦、そして経済の低下によって"映画産業が育たない国"であった。しかしそんなニカラグアから、様々な国の映画産業の力を借りて、人々に"ニカラグアの現状"を知らせる刺激剤のような作品が作られた。

まず、ニカラグアの"ゴミ問題"には衝撃を隠せなかった。ちょっとグロい話をすると、冒頭で救急車に乗ってた救急隊員が医療廃棄物をポオンと捨てた所(人体の欠損部分も)を見た時、目を疑った。そのくらい、地獄と言えるほど環境設備が整っておらず、基盤や配線から取り出される金属か何かで生計を立てているという事だろう。とにかくそれがまず衝撃的だった。
"マリアの心情"が、現実と彼女が見る"夢の中という幻想の世界"の2つの方法で描かれているところも非常に興味深い描き方となっていた。現実ではマリアが悲しい顔をする所をあまり映さなかったり、終始笑顔がないと言っても良いほど「ムスッ」としていたりと、マリアとこのニカラグアという国の現状…この2つが笑えない状況だという事を指し示しており、そしてマリアの悲しい部分と戸惑い、そして"母への怒り"をまとめて夢の中の歪んだ世界で表しているのが凄い芸術的で驚いたのだ。

そして、マリアが母親との交流以外で"唯一心を和ませる存在"なのは、彼女が預けられるリサイクル施設で出会った孤児:"ダデオ"だろう。喧嘩もするのだが、マリアにとってダデオは確かに気を許せる存在であったのは間違いないなと思った。

鑑賞前は、本作は結構ショッキングなシーンもあるので注意が必要なのだが、ニカラグアの人々が置かれている現状を、リアルとフェイクの世界でマリアの心情と共に描いている独特な作品だなと感じた。マリア役の"アラ・アレハンドラ・メダル"の演技が凄い印象的で頭から離れない。

改めて、見れてよかった作品だなと思った
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