概念さん

MONTEREY POP モンタレー・ポップの概念さんのレビュー・感想・評価

4.0
モンタレー
1967年。サマー・オブ・ラブ。
ウッドストックの2年前。
短かった夏の、始まりの季節。

ウッドストックの狂熱、みたいなものはまだ無く、穏やかな、花の溢れる優しい感じが全体のムード。
曲のチョイスがいいとか悪いとか、撮影の仕方がどうやとか、ライブ映画を映画として評するのは難しい。

けれども、そんな事はどうでもいいのだ。

ジャニス・ジョプリンのBall and Chain。
わななくギター、引き摺るベース、重いドラム、そして、嵐の中で千切られる様なジャニスの叫び。
諦観と希求を激しく往還しながら、上昇していく振幅の上で足を踏み鳴らし髪を乱し身悶え、すべてを巻き込みうねる、感情の振動に決壊する寸前の女の神性。
それは歌でなく嘆きでなく、まさに祈りそのものであって、涙が流れる私をよそに、彼女は小鳥の様に跳ねてはしゃいで去ってゆく。
その小さな背中が、もうこの世に無いという遠さ。
それはかつて世界に存在し、今私から立ち去っていった。
それを瞼の裏に追い続けながら。
この1曲の為に、この映画がある。
そう思わせる映画が、確かにある。



窓辺に坐って
雨が降るのをただ眺めている

神よ 窓辺に坐って
雨が降るのをただ眺めている

私は何かに捕まえられて
まるで鎖につながれたような気分
概念さん

概念さん