概念さん

アメリカン・ユートピアの概念さんのレビュー・感想・評価

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)
3.5
Stop Making Senseは始まりの映画だった。
American Utopiaは終わりの映画だ。
これは形容では無く、映画のどの部分が、全体のトーンを印象づけるか、という話である。
私にとって、これは終わりの映画だった。

結論すると、American Utopiaは「バンド」や「ライブ」の映画ではなく、あくまでも「ショー」、それも「NYのブロードウェイ」のショーの映画だった。
「バンド」や「ライブ」が「個」や「熱量」に依って成立するのに対し、「ショー」は「集団」や「統制」に依って成立する。
演出の有無は問題では無い。
熱量や統制の、圧力の高さでクオリティは決定される。
私が求めているのは「熱量」で、バーンが求めたものは「わかり易さ」「伝わり易さ」といったものだったのかも知れない。
生で観るとまた違うと思うが、ライブとしてもショーとしても、私には中途半端だった。

ただ、演技の悪い映画が悪い映画ではない。

ラストシーン、自転車で会場を去るバーンが夜のNYへ消える。
そしてエンドロール。
Everybody’s Coming To My House、それも、バーンのものでないEverybody’s Coming To My Houseに乗って。
日中のNYを皆が自転車でやって来る。
クローズアップ、横から、足取りはそれぞれに、でも皆一様に同じ場所へ向かって。
日中のNYを、皆が自転車でやって来る。
新しく何かをはじめるために。


終わって、夜の街を歩くと、さっきまで聴こえていたリズムがリフレインしてくる。
雨が降っている。
さっきまでとは聴こえ方も、見える景色も違う。
これは始まりの映画だ。
概念さん

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