ちぐはぐ

インサイド・ヘッド2のちぐはぐのレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド2(2024年製作の映画)
4.2
『インサイド・ヘッド2』は、感情たちのやりとりがまるで政治劇のように描かれていて、最後には感情たちによる“合議制”、つまり内面の民主主義が成立していく。この状態こそ人の成熟だと感じられるすごーく練られたストーリーだった。

ポジティブだけで乗り切ることができた子ども時代から、感情の多様性を引き受けていく思春期へ。この変化の描き方がとても丁寧。
なかでも、ラストでライリーが親友に謝るクライマックスのシーンが良かった。自分を分析して、感情のプロセスを共有するという自己開示をしながら謝るというあの態度は、思春期を通り越して完全に大人の謝罪だった。あんな謝罪と仲直りを自分の人生でもいくつか欲しかった瞬間があったと思うと泣けてきた。ライリーの頑張りにも共感したからかもしれない。

そしてそれができたのは、シンパイが現れて、自分自身を見つめ直すメタ思考の力が育ったからでもある。これが自然にできる大人って、どれくらいいるんだろうとも感じた。

感情はいつも一枚岩じゃなくて、むしろバラバラで言い合ってばかり。でも、そのバラバラな声たちが本質的には信頼しあっていて、そこに彼らとは違うもうひとつの主体として「自分」がいる。「怒っている自分」がいるんじゃなくて、「自分がいて怒りがある」。
これ、禅で言えば「身心脱落」に近い瞬間。すごく本質的な、人間が真に“自分”になるための方法が、しれっと描かれていたように思う。
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