耳の不自由な両親から生まれた一人息子の成長記だ。
産まれた時から20代半ば頃までの様々な出来事を、前半は駆け足で、後半は吉沢亮がじっくりと魅せてくれる。
「お母さんが大好き」という気持ちでいっぱいの子供時代、その素直な気持ちは少しずつ変化して行く。
障がいのある両親を恥ずかしく思ってしまう小学生時代、そして迎える中学・高校時代の反抗期。
実にリアルで、ひとつひとつの出来事が胸に響いた。
私が一番やられたのはエンドロールだ。
流れた曲の歌詞が全てそのまま胸に刺さった。
今年の春、離れた土地にひとり立ちした娘への気持ちと重なったのだ。
仕送りの段ボール箱。
その上に添えた手紙と、心ばかりのわずかなお金。
声が聞きたいとかけた電話。
本当はそばにいてほしいのに「こっちは大丈夫だから行って来い」と笑顔で見送る親心。
まさに実際の私の心境と行動そのままで、ひとり頑張っているであろう娘の姿を想像しながら、こみ上げる涙を止めることが出来なかった。
障がいが “ある・ない” に関わらず、子を思う親の気持ちは変わらない。
これは親子の旅立ちの物語。
特に大きな盛り上がりシーンがあるわけではない。
映像は淡々と流れて行く。
それでも私には深く突き刺さり、大好きな映画になってしまった。
劇場に行って良かったな。
50〜60代の女性客が多かった。
みんな我が子を思い、自分自身と重ねながら観ていたのかもしれない。
でも泣き腫らした目をしていたのは私だけだったけどね。笑