このレビューはネタバレを含みます
ネタバレを踏みたくなさすぎて初日仕事終わりに駆け込み。
色々情緒をかき混ぜられて言語化できなかったけど、パンフレットの満島ひかりのインタビューを読んで色々腹落ちしました。多分全部拾いきれてなくて分かってないことたくさんあると思うんだけど、丸1日以上経った現在の感想を書き込む。
タイトルの「ラストマイル」について。
佐野父がラストマイルのことを「荷物が手元に届く、かつては当たり前じゃない奇跡で誇りを持っていたこと(うろ覚え)」みたいに説明していた。
一方今は当たり前に享受されて有難られもせず、大きな物流の営みの中では替えがきく存在になっている≒がらくたと(乱暴だが)括るとする。かつての価値を失ったが、担い手にとっては誇りとなって守られているもの≒がらくた≒ラストマイルみたいな飛躍ができるんじゃないかなと。
ラスト、伝票を見てすぐどの家か分かる委託ドライバーと、Hinomotoの洗濯機(これもがらくた的な側面が強い)があの幸せを守ったように、ラストマイル的なガラクタたちが活躍する物語として見ると目頭が熱くなるというか…
求められぬ実直なものづくりで敗北した日本製品が爆弾を止めるのってなんか思想が強いなと最初は冷めてしまったけど、ラストマイルたちの意地の発露と思って見るといじましい魅力を感じました。
物語の大筋としては、ベルトコンベアーをどのように止めるかという話。
山崎は一人で飛び降りたが止められなかった、筧はその真意を知らぬまま爆弾を荷物に混ぜて(自ら最初の犠牲者になって)止めようとしたけどシゴデキの現場の奔走で止まらなかった。
止めたのはみんなで一斉にやめるという集団行動だったこと。
悲しいけど希望もあるような、このバランス感が野木脚本の強さですよね。
あまりにも濃密な2時間で、脚本を売ってほしい線引いて読みたい!!という気持ちになった。
一人一人の行動の表層しか映画では見られないけれど、それぞれ背景にどんな思いや人生があったのか考えるヒントがたくさんある(それだけ設定が練り込まれている)と思う。
他人事として「問題だよね」と思いたくなる社会問題を主題に置きながら、塚原監督の迫真の映像の力、生々しすぎる爆発シーンやメッセージ性強いカメラワークのおかげで、否応なしに自分ごととして考えさせられる。
見終わってこれだけ考える「余白」がある映画、事実や報道の限界を超えて刺さるナラティブを持つ映画でした。大好き。
私のラストマイルも誰かの役に立つように生きていきたいと思う。