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ラストマイルのdeenityのレビュー・感想・評価

ラストマイル(2024年製作の映画)
4.4
「アンナチュラル」と「MIU404」の大ヒットドラマの世界線で繰り広げられるシェアードユニバース(と呼ぶらしい)作品です。
生憎私はドラマ見ない派なのでどちらの作品ももちろん見てないわけですが、全然見なくても楽しめるとの噂で鑑賞してきました。

とりあえずストーリーに関係ないところとして、事前に予習は一切なくても楽しめると思います。正直どのキャラがどっちのドラマのキャラなのかもわからんレベルではありましたが、シンプルに「豪華な配役だなー」くらいにしか思いませんでしたし、何となくファンサ的な演出とかも察しましたが気になるレベルではなかったように感じました。
なのでもしドラマ未鑑賞で引っかかってる方がいるならば、全然気にせず楽しめる作品だということは強調しておきます。

また、ストーリーも結構面白かったです。
脚本を務めた野木亜紀子さんの作品だと先日見た『カラオケ行こ!』はめちゃくちゃ楽しめましたし、『罪の声』とかは雰囲気違い感じもあって安定感ある内容でした。
大手ショッピングサイトによる配送物の爆破テロってのが目のつけどころとして面白かったですし、また単なるサスペンスムービーとするのではなく、社会問題にも切り込んでいる辺り見応えがあって素晴らしかったです。


ここからはネタバレ。
DAILY FASTはまあAmazonさんですよね。もちろん私もヘビーユーザーですし、コロナ禍以降ネットショッピングの需要は顕著に高まっていると思います。
実際Amazonの工場とかがどれだけの規模とか漠然とデカいんでしょ、くらいしか考えたこともなかったですが、冒頭それを視覚的に伝えるような工場面積、長蛇の列、セキュリティーなんかで初めて凄さを実感しました。
全体の働き手としては800名近くいて、数字的にもインパクトありますし、お金の動きとかもそうですね。

とはいえそれだけの企業を回すことの重さがわかるかといったらピンと来ませんし、それ故に主人公のエレナを演じた満島ひかりには終始感情移入できませんでした。
大前提として面白かったんですけどね。ただ、個人的にああいう利益優先で人を思いやれないようなキャラクターって苦手なんですよね。平気な顔で高圧的な言葉を発するし。会話も若干こすべってる感ありましたし。「喩えが下手なくだり何回やんねん」とか思いましたしね笑だから所詮はその規模の仕事の責務とかをわからん自分には理解できないだけかもしれませんが、ここは唯一のネックなポイントでした。

ただ、そうであったからこそ委託する配送業者である阿部サダヲさんとか宇野祥平&火野正平さん辺りの人に対しての意識が働きましたね。
そりゃこれだけネットショッピングを利用する人が増えてる中で、低賃金でドライバーする人たちはたまったもんじゃないよなと。私もよくありますが、ポストに不在伝票が入ってて、「もっと別の時間にしてくれよ」とか悪態吐くこともありましたが、その分二度手間で届けてくれる人がいるんだよなと。

そして中村倫也さんのような人も少なからずいるわけで。特に真面目な日本人の人間性からすると1人で抱え込み過ぎる人もいるでしょうし、結局誰が悪者なのかって考えていくと、巡り巡って最終的にはそういう社会が間違ってるってとこに辿り着くわけで。

ロッカーに残された「2.7m/s→0 70kg」のメモだって、ベルトコンベアを1人が犠牲になったところで止めれないというミクロな捉え方もできるけど、社会の歯車は1人の力で変えることはできないというマクロな捉え方もできる。

そうなってくると単にドラマファンのためのファンサ的な映画にするのではなく、それを機に見に来た客層にまで刺さるような社会派メッセージを重苦しくない程度に提示した点が何より素晴らしいと思いました。
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