2025年アカデミー賞では長編アニメーション部門を受賞しましたね。てっきり『野生の島のロズ』が取るもんだと思ってたので、まあまあ驚きだったわけですが、見てみるとわりと納得のクオリティでしたね。
まあ何が凄いかというと、とりあえず各動物の解像度ですかね。それぞれの動物がそれぞれの個性を持ってちゃんと描かれているんですよね。
たとえば中心である猫なら基本ベース臆病な性格は持ちつつ、犬なら人懐っこいとかメガネザルはちょっと人間らしい一面があるとか、そのベースの上にリアルな仕草が乗ってきて、その上もちろん動物なので喋るわけでもない。それでもたしかにその動物の行動の意図とか発した声の意味とかが伝わってくるんですよね。
もちろん演出的な部分も多分にあるとは思います。さすがにオールの操作とかは現実的ではないですよ。というかそもそもの行動の意図とかも我々人間がそうであってほしいというか勝手に補完してる部分もあるでしょうね。
それでもあのリアルな動物の描写は見ているだけで魅了されるものがありましたね。
ちなみに人間は一切出てきません。会話0って点でいうと『ロボドリ』なんかが思い浮かんだりしますが、本当に動物の視点に立っているようなリアルさが感じられるのも魅力の一つですね。
それこそ中心にいるのは黒猫ちゃんなのですが、その視点で物事が描かれると実際以上に大きく見えたり、スピーディーで緊迫感が生まれたり、また猫視点だからこそ視線が切れるわけでなく、そのまま長回しで視線が映っていく感じとかも没入感が凄かったです。
会話がないのでスローテンポではありますが、水にたゆたう感じとかそれぞれの動物描写だけでもゆったりはしますが全然見れてしまうので、そこが何より魅力的でしたね。
まあ映像的な部分でいうと文句なしに素晴らしかったわけですが、テーマ性の部分でいうと見えにくさはあって、とはいえ結構『ロズ』と重なってくるような感じはしましたね。
というのも、大洪水をきっかけに生きるためには動物同士の共生っていうものが欠かせなく、違う個体とかだけでなく、違う種の動物だろうと助け合わないと生きてはいけない。
でもそれって言葉が通じる人間ならば何とかなりそうなものではあるけど、動物だったらどうなるだろうか。
というまあそれ自体がそもそもリアルなのかどうなのか、人間が見たいように見てるだけじゃないのって問題があるのはわかります。
ただ、結構ここで本作が円環構造で描かれているのが効いてきて、明らかに最初は孤独で怯えていた黒猫ちゃんが、最後には一匹じゃない姿で映し出されるというのは、生きていくためには助け合うことも必要であるというリアル版『ロズ』みたいな感じには受け取れる気がしました。
まあでも世界観とか時代とか、それこそ場所とかもそうですけどあまりに現実的ではないというか説明不足過ぎて若干引っかかりはしたんですけどね。
それでも見てるだけで楽しめる作品ではありますし、何なら子どもでもいけるでしょうね。それくらい万人向けの作品で素晴らしかったと思います。