”DAILY FA"U"ST(デイリー・ファウスト)”が示す意味とは。
◇
最近、観たい新作公開映画が無く、旧作映画や配信ドラマ、アニメばかり観ていたらずいぶん間が空いてしまいました。
そんななか、元のドラマを観ていないのでスルーしていた本作でしたが、面白いからと誘われて視聴。評判通り、とても面白く、楽しめる映画でした。
MIU404は何話か見ていましたが、アンナチュラルは全くの未視聴。ということもあって、変わったテーマで雑談レビューを書きたいと思います。
◇
本作は周知の通り、Amazonがモデルと思われる、”DAILY FAST(デイリーファスト社)”が舞台。人々は機械のように働き、毎日数え切れないほどの出荷物をさばくスマートファクトリーで、出荷物に爆弾が仕掛けられ、、というストーリー。
この物語の中盤でキーになるのが、”DAILY FAST”ならぬ、”DAILY FA"U"ST(デイリー・ファウスト)” というフェイク広告。『よく見ると本物じゃない』、という程度のネーミングでしたが、私はこの『ファウスト』というところが妙に気になってしまいました。
ファウストといえば、ゲーテの戯曲『ファウスト』 (我ながら面倒な性格ですいません・・)
名作でありながら難解な戯曲として知られており、私も子供の頃、図書館で手塚治虫の漫画で読んだ+α、ぐらいの軽い知識しかありませんが、今考えても、人間の深層心理を描き出した名作です。
一部を意訳すると、こんな感じ。
・努力家で勤勉なファウスト博士は、人生に行き詰まり、死を選択しようとする。そんなファウストの前に悪魔メフィストが現れ、ファウストに対して提案する。
・提案とは、お前に自由を与えるが、満足が得られたら、その後地獄へ落ちてもらう、というもの。そして、ファウストは、悪魔メフィストと契約し、自由を得るのだった。
・ファウストは若返って人生を謳歌する。そして、ファウストが満足を得た瞬間、再び悪魔メフィストが現れ、ファウストは命を奪われる。
というもの。
映画と関係がありそうな部分のみの抜粋ですが、2つの点で、映画と関係してるのでは?と。
ひとつは、ネタバレで詳しくは書けないですが、物語の重要な鍵を握る女性。彼女は、恋人の無念を晴らすために、ファウストのように悪魔と契約したのではないか、ということ。
もう一つは、『ファウスト的衝動』 というやつです。
辞書を引くと、以下とあります。
------------
《ゲーテの「ファウスト」の主人公の言動にちなむ語》自己の可能性追求のために、人生のあらゆる幸福と苦痛を体験したいとする衝動。
------------ goo辞書より
つまり、
DAILY FAST、毎日速やかにお届けします、ではなく、
DAILY FA"U"ST、お前らは、毎日が自己の欲望のおもむくままである、という意味なのではないか。
ゲーテの『ファウスト』では、最終的に、『神はすべて、努力なすものを救いたもう』ということで、勤勉なファウスト博士は救済されるのですが、今のこの世界は救われるのでしょうか。ラスト、ロッカー前の岡田将生さんを見て、そんな事を考えてしまいました。
以上、雑談レビューで失礼しました。