2024年 ”ラストマイル” 監督 塚原あゆ子 脚本 野木亜紀子
これを作ったのが日本の女性たちであるということ。。。。。
Amazonとクロネコヤマトを彷彿させる。
流通や配送にかかる労働問題は機能的なものでは無く、組織の意識にある、要はAmazonやクロネコの体制や幹部の問題、それを履き違えてはならない、その点はディーンと満島のやりとりでわかるだろう、岡田将生が唯一の良心の化身でした。
ネット小売と物流業者の過酷な現場が舞台。そこで働く人々の過重労働や下請けイジメなどの社会的メッセージ性を表現している
岡田将生と満島ひかりの演技とセリフが見事で、堪能できる、是非。
満島ひかりは好きな女優さんで、連続爆弾事件に現代社会が抱える問題を、あまり重くなりすぎないように魅力的に演じてるが、この内容であのテンションでよかったのか。。。。。。
すべてはお客さまのために、実際はすべては企業利益のために。
巨大物流センターの何百人もいる従業員の中で、正社員はたったの9人。これも社会の縮図のように感じた。
企業が利益と合理性を追求するあまり、人間性に欠けた働き方を強いられる労働者たち。特に物流の世界はその問題が顕著だと思われた。
ストーリーは、世界規模の通販サイト「DAILY FAST」は、購買者の消費意欲を促進させる大イベント【ブラック・フライデー】の前夜、段ボール箱に詰められて配送された商品が次々に爆発する事件が起きる。
同社が関東に置く巨大物流倉庫の若き女性センター長 舟渡エレナ(満島ひかり)と入社2年目のチームマネージャー梨本(岡田将生)は、物流会社の日本統括本部長(ディーン・フジオカ)から真相を解明するように指示され、一方警察も介入してくる。
警察からの要請にもかかわらず、企業理念と売上を理由に出荷停止を拒む中、出荷作業を止めない様に努力する中、膨大な在庫の中から爆発物を見つけ出そうとする、エレナと梨本が頭脳フル回転で対応する
エレナが5年前に退職した社員のデータを削除していたので彼女が犯人なのでは?と思ったらミスリードだった。これ以外にも爆弾の犠牲者に対する自責の念を独り言のように呟いていたが、これは一度だけ面識のある真犯人(5年前に倉庫内で自殺未遂して植物状態になった社員の恋人)の胸の内を代弁していたと考えれば一応の筋は通る。筋は通るがかなり強引な印象は残った。
犯行動機や犯人像といった核心部分に近づいていくスリルと並行して一般の人たちの日常をインサートする趣向も良かったと思う。その代表が下請けの火野正平と宇野祥平演じる親子の末端の配送業者のだろう。弁当を10分で食べ続けトップドライバーに上り詰めた父火野正平と前職の家電メーカ息子宇野祥平の家電メーカーの商品に対する息子の愛着エピソードなどシナリオが練り込まれていた。1ダース作られた爆弾の最後の一個はマンションの宅配ロッカーに保管されていて下請けの配送業者の親子が急いで回収に向かう所がクライマックス。落下の衝撃で危険物が混ざり合い爆破する直前の箱を持った息子が洗面所に退避、その直後に爆発音がして息子の死を連想したが前職の家電メーカーが製造した洗濯機(耐熱性に秀でていることが前半で語られていた)に放り込んだおかげで命拾いしたのである。この伏線回収もお見事。
チャップリン「モダンタイムス」を思い出す
過労、資本主義的な論理に押しつぶされそうになる。
でも見終わって感じた感情は「恐怖」そして次に「感動」。
資本主義の本質的なところを、目を背けてる本質的なところを核心ついてきたようで、こんな映画作れるのは逆に資本主義を輸入した国だからこそだなと思った。資本主義を生み出した国でないからこそ、この日本の規模にして、この皮肉を描けたのかもしれない。
上からの皺寄せが下に行き、みんな自分の保身ばかりで、気づいたら抜け出せないレールの上にいる。マジックワードで誤魔化す必要があるのは、本当は自分自身。
このシステムの上で生活が成り立っている以上、一度動き出した歯車は止まらないし、明日もまた日が昇り、同じシステムの中で生きて行く。僕は一種の恐怖を感じたと同時に、人間の本質はなんなんだろうって思った。
配達の親子が、最も人間の本質に近いのかな。そうだといいな。