悲劇を他人事にできる鈍感さを、捨てることが幸せなのか。
アメリカで内戦が起こったとしたら…を描く作品。序盤に非常にサラッと情勢が語られるだけで劇中での説明は非常に少ないので、アメリカのことをそもそもそんなに知らない人は背景は掴みにくいはず。ただ、そこが重要なわけではないので、全く気にはならなかった。
主人公は戦場カメラマンとジャーナリストたち。本来のジャーナリズムとはこういうものなのかと、多くが語られることはないなかで、その姿勢から感じ取ることは出来た。
内戦状態がゆえにか、ほぼスマホが使われることはなくそこがリアルであり、またSNSに対してのアンチテーゼのように感じる。
簡単に言えば西と東で分かれて戦っており、東のリーダーはワシントンD.C.にいる大統領。
その大統領に対してジャーナリズムの本懐を遂げるために決死の取材の旅に出るというストーリーだが、兎に角緩急がえぐい。
ロードムービーっぽさもあり移動シーンについては音楽が流れてくるも、そこから一転戦場のシーンになると驚くほどの銃声が耳に轟く。
戦場カメラマンという職を誤解していたと気付かされるほどにその姿は生死の狭間にあるものであり、そこで撮る写真の価値が、今まで思っていたよりも何倍も大きいことに気付かされる。
恐ろしいのは、内戦が本当に起こったらこうなる可能性が高いのだろうと思えてしまうことだ。それがアメリカでのヒットにもなっているのだと思う。
大統領選が間近にあることも火をつけている気はする。この映画が選挙への関心をもし高めるのであれば、本当に意義ある映画ではあるまいか。
政治的な意義を感じる反面、やはり戦争ものであり、人間の負の部分、狂気の部分が事実あり得るもので描写されているからこそ、怖い。
おそらくアメリカ人が感じるこの映画への感情は、僕なんかとは比べ物にならないものなのではないだろうか。
まだ、これを遠い国で起こり得るかもしれないことと客観視してただ面白かったと言えていることが、鈍感という幸福であり、それが続く幸運を願わずにはいられない。
暴力を笑顔で彩る狂気が人には確かにある。