メシと映画のK佐藤

リアル・ペイン〜心の旅〜のメシと映画のK佐藤のネタバレレビュー・内容・結末

リアル・ペイン〜心の旅〜(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

前評判は良く、良作揃いのサーチライト作品であったので期待値高めで鑑賞したのですが、個人的にはそこまで乗り切れなかったと言うのが正直なところです。

本作では主役であるデヴィッド役でもあるアイゼンバーグ監督曰く、本作の主題は「適切な痛みとはあるのか?痛みを尺度化する事は出来るのか?」との事。
デヴィッドと従兄弟のベンジーがユダヤ人であり、亡き祖母の故郷ポーランドを訪ねると云う設定により、上述の主題が浮き彫りとなります。
デヴィッドは、強迫性障害と自由人であるベンジーへの憧れ及び劣等感。
ベンジーは、突発的に薬物による自殺を図る程の躁鬱病。
各々「痛み」を抱えている。
一方、彼等の祖母や多くのユダヤ人は、ナチスによる迫害と云う大きな「痛み」を経験している。
ホロコーストに比べたら、デヴィッドとベンジーが抱える痛みなど取るに足らないのではないか?
否、痛みを尺度化する事など出来ず、痛みに適切不適切も大小も無いのではないか?
上述の様なキャラ設定の二人がポーランドを旅する事により、アイゼンバーグ監督の述べる主題が鮮明になる作りは、見事であると思います。
旅を進めて行く内に、デヴィッドとベンジーの抱える痛みが段々と明らかになって行く作りも良い。
ただ、個人的には上述の事を踏まえた二人の「その先」を見せて欲しかった。
ポーランドの旅を通して二人の仲は少し深まりましたが、痛みに関しての前進は、自分には感じ取れなかったのです。
その類の作品を見慣れているせいもあるのですが、ポーランドの旅を通して大きく前進する様を見せて(魅せて)欲しかったです。

自由奔放なベンジーに時には呆れ、時には戸惑い、時にはイラつきながらも、何だかんだ言って仲良くやっているデヴィッド…この二人のやり取りは、個人的に気に入っています。
記念像と特急電車でのやり取りは、笑わせて貰いました。
こんな魅力的な二人だからこそ、旅を経て変化した様を見せて欲しいと思った次第です。