ノラネコの呑んで観るシネマ

RHEINGOLD ラインゴールドのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

RHEINGOLD ラインゴールド(2022年製作の映画)
4.5
刑務所から大ヒットを飛ばしたドイツのラッパー、カター(ヤバい奴)の伝記。
この人の人生が面白過ぎ。
両親は裕福なクルド系イラン人で、革命で弾圧され反体制派に。
戦場で生まれ、物心ついた場所は刑務所。
父が著名な音楽家だったことから救出され、難民としてドイツへ。
幼い頃は恵まれた環境だったが、両親の離婚から絵に描いたような不良街道を爆進。
薬の売人として下手を打ち、金塊強盗で金を作って手配され、シリアに逃亡するも逮捕、送還される。
お見事な転落人生だけど、それなりに人たらし。
なにかと悪い友だちが助けてくれるし、何気にダメンズに弱い彼女もゲット。
そして起死回生の一打となるのが、自分たち家族を裏切った父から受け継いだ音楽の才能と言う皮肉。
タイトルはワーグナーの「ニーベルングの指環」の序夜、「ラインの黄金」から。
これは世界を支配する力を秘めた黄金を強奪した男が敵に捕縛され、自由の代償として黄金を奪われる話。
カターにとって、音楽こそ黄金だったという訳か。しれっと自分を叙事詩の登場人物に例えちゃったり、随分と調子のいい話だけど、憎めないんだよな。
色々映画として盛ってると思うが、それを含めて楽しんでよ、と言ういかにもなスタンス。
ラストのエピソード見ると反省してるんだかしてないんだか分からないけど、最終的に幸せになれた様で、とりあえずは良かった。
相当な苦労人なのは間違いないし。
革命、戦争、難民、犯罪、そして音楽。
ドラマチックに波瀾万丈な、21世紀の現代ならではの貴種流離譚だ。