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ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争のペインのレビュー・感想・評価

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かのサンローランが立ち上げた映画会社、サンローランプロダクション製作のジャン=リュック・ゴダール遺作短編(※遺作長編は『イメージの本』)。

まるでリュミエールや、更に遡ることエドワード・マイブリッジの“活動写真”の如く、ゴダールの遺作は映画の原初的快楽に満ちている。

20分の「予告編」と高を括っていると、撮影ファブリス・アラーニョとの近作(※「イメージの本」「さらば、愛の言葉よ」同様に)、その情報量の密度と鋭利さにどっと疲れが出る。

それでも少なくとも、3時間のダラダラとした娯楽大作を観るよりは確実に有意義な、何度も反芻したくなる20分を過ごせたと言い切れる。冒頭数分間に及ぶ無音演出は、ここ数年でも最も緊張感が走ったような気がする(※逆に急に音が鳴り出す瞬間も然り)。

堀さんという方のパンフレット解説によると、『イメージの本』発表後、フランスで最も権威ある文学賞ゴンクール賞受賞作家のシャルル・プリニエ『偽旅券』に囚われていたというゴダール。

その小説には「ディトカ」「カルロッタ」という女性の章があり、本来本作撮影に参加してもらう予定だった(※コロナ禍のため断念)自身の過去作『アワーミュージック』の主演女優、サラ・アドラーとナード・デューをそこに重ねていると←早速、劇場帰りに久しく観ていなかった『アワーミュージック』を観返すべく近場TSUTAYAでレンタル📀

また『接吻』等の万田邦敏監督のパンフのコメントで、ゴダールについて“気難しい風で、気難しいことを気難しそうに喋るくせに、笑かすこともせずにはいられなかった人”というような言葉がまさに!という感じ。

P.S.
劇中言及していたジャン=ピエール・メルヴィルの『海の沈黙』もまた観返したいなと思ったが、アマプラ有料配信だけでレンタルは無くなっている模様←同じく引用作品、アーサー・ペンの『奇跡の人』はU-NEXTで観られるようなので観よう…。一旦採点は保留としつつ、記憶に残る映画体験としてここにメモ📝
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