やまもとしょういち

ストップ・メイキング・センス 4Kレストアのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

4.0
歴史的音楽映画にも関わらず、初見でした。でもその初見がこの「4Kレストア」版でIMAXシアターだったことを幸福に思う。ありふれた言葉ではあるけれど、「まるでそこにいる」臨場感にここまで迫った劇場体験は今までなかった。この体験をすることができる、というだけで、いま劇場で見る価値は十二分にあると思う。

作品としては、デヴィッド・バーンがアコースティックギター1本でやる「Psycho Killer」に度肝を抜かれた。「こんなにリズム感がいいのか…」と素朴に鑑賞時には思っていたが、白人男性であるデヴィッド・バーンがここまで黒人由来のグルーヴを体得していたことに驚かされる。それ以前にブライアン・イーノとの作品も含め、Talking Headsがアフロビートを導入していったことを「文化の剽窃」とみなすこともできるが、デヴィッド・バーンやTalking Headsのそれは、いまでいうところの「多文化主義」の先取りと思いたい自分がいる。もちろん「文化の剽窃」でもあると思うが、デヴィッド・バーンが歌うのは白人社会の現実でもあるわけだから、黒人由来のグルーヴとリズムと白人社会の歌の共存なんじゃないかと。

P-ファンク経由であることは理解しつつも、バーニー・ウォーレルがいた1983年のLAのステージ上に未来を見たような思いだった。