ジェーン・シェーンブルン監督の『We're All Going to the World's Fair』に次ぐ長編2作目。
ちなみに今後発表される初小説『Public Access Afterworld』で、3部作として完結するようです。
監督がクィア当事者であるからこそですが、前作以上にもの凄い才能を感じさせる作品でした。
孤独で強い不安を抱える青年オーウェンが、とある誰もいない会場で、影のある歳上の少女マディと出会う。2人は日本で言えば中1と中3でしょうか。
マディは、毎週土曜の夜に放送されているファンタジーホラー番組『The Pink Opaque(≒曖昧なピンク)』に夢中で、その公式エピソードガイドを読んでいたのだ。
オーウェンは無骨で冷たい父と優しい母と暮らし、就寝時間は10時と決められているのでその番組はCMで見ただけで本編は見ていない。
そんな彼にマディはVHSテープに番組を録画して渡してくれるようになる。
この『The Pink Opaque』に大きな影響を受け行動を起こすマディと、彼女のようには踏み出せないオーウェン。互いに性的違和を抱える二人がそれぞれの苦悩の道を歩んでいくのですが、このドラマの世界と空想と現実が曖昧になっていくような展開、二人の不安・痛み・苦悩...の演出・表現力に圧倒されます。
〈参考情報〉
『The Pink Opaque』は、超能力を持つティーンエイジャーのイザベルとタラが悪役Mr.メランコリーと戦うというものですが、監督が夢中で見ていたという、1997年から2003年に全7シーズン放送された『Buffy the Vampire Slayer』(『吸血キラー 聖少女バフィー』という邦題でDisney+で視聴可能)に大きくインスパイアされているとのこと。
監督のお気に入りのエピソードは「S2-E22」と「S6-E07」だそうです。