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ピアノ・レッスン 4KデジタルリマスターのMALPASOのレビュー・感想・評価

3.4
映画『ピアノ・レッスン 4Kデジタル・リマスター』

超久々の劇場鑑賞。
昨年亡くなった坂本龍一がニューヨーク・SOHOの自宅の庭に古いピアノを置いていた。そのピアノは弾く事はできず、雨風で徐々に朽ち果てていった。これを見た時、ピアノって置いてるだけで素敵な楽器だなと思った。1台のピアノから想像する多くのドラマ。細かな調律が必要で厄介な楽器だけど。

監督・原作・脚本は、ニュージーランド出身のジェーン・カンピオン。これがオリジナルであることがすごい。

初めて観た時、それほど激しい作品を想像してなかった。官能ものでびっくりした。
舞台は19世紀のニュージーランド。入植者のもとに嫁ぐためにやってきたエイダと娘フローラ。小さな船で運んできた荷物には一台のピアノがあった。エイダは前夫の死のショックでしゃべれず、精神も不安定。彼女の感情を表現できるピアノは、土地と引き換えに地主のベインズのもとに。
しかし、エイダに好意を抱いたベインズは、一回ピアノを教える度に鍵盤を一つ返すと言う。

もう、エイダとベインズの全裸濡れ場がすごい!小さくて華奢なホリー・ハンターと、この頃が一番マッチョなハーベイ・カイテル。美女とケダモノの交わり。それを床下から覗き見るサム・ニール演じる夫。幼い娘までもがそれを目撃する。
全員の演技が素晴らしい。

劇中ずっと雨が降っていて、ジメジメとした森の中で繰り広げる愛憎と官能、そして暴力。儚く美しく最後までピアノを軸に描いたお話。この話を思いついたジェーンはとにかくすごい。
後の名作『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の人物描写にルーツを観ている様。

今観ると、娘がヤングケアラーである事、女性を虐げる男性像を以前よりも意識する。
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