このレビューはネタバレを含みます
「希望の花、咲かせていい?」
「みんな色々あるんだよね」
甲府盆地のど真ん中に位置する
「みらいファーム」障害福祉サービス
そこに通う人々の日常や仕事を丁寧に追う
紡がれる言葉は少なく
テロップと音楽と彼等の日常とで構成される
何よりも注目したのは制作陣の目線
青柳監督はじめとする制作陣がみらいファームの人々をどう見つめ、どう映して、何を表現するのか
その目線が作品を通して温かかったのが印象的 とても好きな色だった
青柳監督の小さい頃から身近にあった施設というのが伝わってくる
冒頭に上げた言葉がとても強く頭に残っている カメラの回していない日常でも、そんな素敵な言葉が飛び交っているのかと思うと、本当に温かい
まさにラストは小林茂監督の『わたしの季節』 あのカットの良さはこの上ない
ここからは自分の好みの話として…
温かさ
それが良さでもあって悪さでもあって
『東京自転車節』ではあった青柳監督独特の社会風刺が今作には弱くて
もちろんこの時期に公開となれば相模原の事件を思い出してしまう
植松被告は園の職員を数年経験した後、悲惨な事件を起こしてる
植松被告は確かに障害者の日常を触れた後にあのような思想を持つ
この作品では、そこに通い日々生きる彼らの手取り足取りが十二分に伝わってきて その分そこからの発想の発展を何か掴みたかった
それは働いている職員と制作陣との思想の違いかもしれないし、施設の地域性や隠れた社会との苦悩にあるかもしれない
青柳監督には見えていて、わざと省いたのかもしれないが、省くには勿体無い程のテーマであると思う
現実はもっと残酷な事象の連続であるし幸せな風景ばかりではない そんな苦しい現実に対する不安が落とし込められていたら作品の抑揚でまた一つ深さが出たと思う
自分が見落としている可能性はあるが…