Moomin

すばらしき世界のMoominのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
5.0
「嵐が来る前にコスモス切ったんだ」
何年ぶりか
俳優さんが涙する前に涙が溢れ出た

頭に血が上ったらまあ止まらない
何十年と刑務所で過ごした男の出所後の物語

すごい。本当にすごい。
普通に生きていくことのディティールを映像化する 仕事に、お金、何より絶対に避けられない人との関わり
「人生は生きづらく、あたたかい」
まさにその言葉通りであった
自分に手を差し伸べてくれる人
差し伸ばしてるフリをしている人
まずそもそもの自分のモノサシの基準
そこら辺の演出の裁量がどれも絶妙で 登場人物の魅力の高さ、役所広司の魅力の高さが際立つ

挟まれる雑感がとてつもなく良い
数秒のワンカットなんだけれどもとても深い 計算し尽くされたワンカットがたくさんある

テレビで働いてる身として、メディアの葛藤があまりにも的を得ていて
長澤まさみのあのセリフ前にテレビのこと心底嫌いになりそうだったけども、なんとかギリギリ持ち堪えた
メディアの社会的義務とメディアの暴力性については永遠のテーマである


暴対法に打ちのめされた時代を描く『ヤクザと家族』とはまた打って変わった作品
色んなチクチク言葉に社会からの冷ややかな目線、主人公の社会に適す事が難しい性格、日本の、世界の永遠の社会問題「子供の生い立ちの環境」 上げればキリがないほど苦しい時間が続く映画
日本に、大人の世界に未来が見えない苦しさ
それでも、介護施設のコスモスのお話の時に涙が溢れ出てしまっていた
役所広司と共に涙が流れてた
あのシーンにどれだけの複雑な感情が含まれていたか 考えるだけで鳥肌モノの素晴らしいシーンだった

実際の量刑や過去の事件の真偽などが今作では解明されていないだけに主人公をどうこう語るのは浅はかなのを自覚持ってレビューを
Moomin

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