金春ハリネズミ

不死身ラヴァーズの金春ハリネズミのネタバレレビュー・内容・結末

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

あああああ〜
ハズレ引いてもたぁ〜
さいあくや。さいあくや〜。

松居監督は「ちょっと思い出しただけ」が意味わからんくらいの名作だったので、まぁいちおう行っとくか。という気持ちで劇場へ。
サブスクでもいい。
別の映画見ればよかた。
最悪や。

こんなん書き込んでる自分がほんま嫌になります。
けどいち観客として思っちまったもんは仕方がないから吐き出すしかありません。

原作は未読です。
マンガなんですね。

全編通して芯を喰えない不愉快な浮遊感、ひたすら横滑りし続ける滑稽さ、耳に突き刺さる学生たちのがなり声、どこまでも人となりが見えてこない、まるで幽霊みたいな登場人物たちの、ひどく抽象的で短絡的な「愛」についての小競り合い。

なんなんこれ?
誰の何のどこの話?
原作もこんな感じなんでしょうかね?

やとしたら、アニメ化なら百歩譲ってわかります。
なんで実写でこれをやってしまわれたの?

マンガ原作の素晴らしい実写映像化は沢山あります。
そうした作品たちはどれも、「マンガ」という媒体そのものが持つ特有の性質、「荒唐無稽で無責任」に、実写映像なりの回答を示しているように感じます。

本作はどーですか?
僕は原作を知らないので本当に何も言う権利がありません。
この作品単体で考えるしかないんですけど、これはいかつすぎる。
荒唐無稽で無責任が滞りすぎて、肝心の「真っ直ぐな愛の力」が全く心に響いてこない。
「宮本から君へ」みたいな、人生讃歌が聞こえてこない。

まず、この主人公長谷部りのという人がよくわかりません。
長谷部りののバックボーンが一切語られない。
あんなはじまり方だし、家も、親も一切出てこない。
彼女が本当に生きた人間なのかがずっと疑問で、まずそこに躓いてしまった。
そんな長谷部りのなんだから、自ずとその相方に当たる甲野じゅんの存在も極めてフワフワしていて(これは作劇上狙ってのことかと)。

長谷部りのが、なぜあそこまで「好き」を信じるのか、好きに盲目なのか、補助線が一切引かれない。
生死を彷徨うなか、恋をすることで死から免れた幼少時の原体験をもつ、生=恋の、特殊な女の子です。
はい、そういう子です、としか存在しない。

最初からもう怖い。
なんの文脈もなく初対面の人に恋して「好きです!」って大声で叫び散らかす生身の人間映すなよ。
それが成立するのは恐らくマンガだからで、実写でそれやるのはリスク高すぎるやろ(もしくは舞台ならいけるのかも)。
園子温とかもそういうことやる人やけど、あの人でもスベってるとき大スベりするねんから、めゃくちゃ難しい磁場ですよ。

そんな長谷部りのの求愛の根拠は全て「甲野じゅんやから」ってだけらしいけど、ラストのオチ考えたらそれもまじで意味わからへんし。
え?じゃあ今までのはなんやったんですか?好きな人を「甲野じゅん」としてたのは、誰の目線ですか?もう、なんか全部意味わからへんねんけど。は?
なるほど、じゃあ彼女はあれか、なんの見返りも求めずただ好きになった人を好きって思い続ければ幸せな人なんや。
へぇそっか、すごいな。
とおもったら、そうでもなさそうやし。なんやねん。
とにかく、彼女のキャラクター内に、現実味とデフォルメ感とが混在していて、とても市井の人には見えない。
だから、全編通してなんかフワフワしてる。
どこまでがリアルで、どこからが飛躍なのかほんまにわからへん。

そんな彼女の「好き」って価値観はとっても、それはとーっても独特で、本当に掴めない。
怖いです。好きになった人の顔も名前も忘れる人なのに、一度好きになったら、毎朝家まで迎えに行く女ですから。怖すぎます。
そうやって舌打ちしている間に、なんか、全てが、ゆるりと、許されていって、全てが、曖昧に着地していって、

「もし、恋が生きてる証の女の子が、たとえ一日しか記憶が保たない相手を好きになってしまっても、彼女は片思いを続けるの?それでも彼女は、好きを貫くことができるのか?」

なんなんそれ。

「もし好き」

ラノベか。

ええ加減にしてくれ。

あと田中あいつなんやねん。

意味がわからへん。
僕は難解なフランス映画でも見たのでしょうか。
それとも単に、マンガ原作を模倣しただけの、スカスカスカポンタンな一本に混乱しているんでしょうか。
主人公を男女逆にした意図もわかりません。
パンフを買うか見てから考えるつもりでしたが、止めました。
そこまでする気力も湧きません。



よくよく思い返せば松居大悟監督は、バカで無責任な若者を撮り続けてきました。
だから本作も、例に漏れず彼らしい甘酸っぱい素敵な青春映画です。

僕が見誤ったんですね。
なんか、違うものを見たがってたのかもしれない。

ただ、テキスト以外の全ては良かったんです。
やっぱりプロですから、腕はたしかです。

しかもここまで長文でギャーギャー喚いてますから結果的には充分楽しめてしまってるんですよね。

ちょっと次作期待しております。

追伸
三上愛さん、青木柚さんを前の職場でそれぞれ見かけたことがありましたので、こうして劇場でお二人の仕事ぶりを拝見することができたのはこの映画最大の喜びでした。
素晴らしかったです。