すずきじみい

クレオの夏休みのすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

クレオの夏休み(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

監督: マリー・アマシューケリ=バルザック
脚本: マリー・アマシューケリ=バルザック
  ポーリーヌ・ゲナ

パリに住む6歳の女の子クレオが、家庭の事情でアフリカの故郷に帰ってしまったナニーの家に夏休みに遊びに行って、その地の自然に鍛えられながらも温かい人々と過ごしてちょっと成長する、という様なザ・定型なハートウォーミング作品と思ってたら、予想の斜め上をいく、エグいリアリティを見せてくれる、でもハートウォーミングな作品だった。

映画的な出来事は何も起こらない、日常が淡々と描かれる、のに最後、主役のクレオが大きく成長している。

子どもって決して天使じゃない。
けどスポンジの様に柔らかい心はすぐに変われる。
そんな子どもの描き方が本当に自然体。
遠い外国に出稼ぎに行かないとならなかった母親と生後すぐに引き離された息子が帰ってきた母親に抱く許せない気持ちも納得。
でも、自分にとっては母を取られた憎い相手のクレオを、「帰れー!」と意地悪言いながら、そして文句言いながらも遊び場からおぶって連れ帰り、髪を洗ってご飯を作ってやる息子の善性も、心の本丸は汚れていない子どもあるあるだった。

観客を強く惹きつける様なフィクション性がなく、子どもと親(親代わり)を描く場合、どこにでもあるような話なので、主役のクレオを演じるルイーズ・モーロワ=パンザニちゃんの演技や繊細な表情がこの作品の言わんとする事を担ってると思うが
撮影時、5歳半で演技未経験だった彼女の演技、これ演技?と疑ってしまう位の、
私的にはアカデミー主演女優賞もののだった。
ちなみに、ナニー役のイルサ・モレノ・ゼーゴもナニーと同様の出自、経験を持つというだけの演技初心者だそうだ。

この二人の自然な演技とドキュメンタリーのようだけど、ちゃんと感情表現の的は外さない脚本、演出のおかげで、赤の他人だけど、ずっと母親代わりだった母とまだ6歳の娘の別れ、そりゃ辛いわって、すとんと共感できた。