このレビューはネタバレを含みます
自宅で。
2024年のアメリカ/アイルランドの作品。
監督は「スクリーム6」のマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレット。
あらすじ
ある大富豪の12歳の娘アビゲイル(アリーシャ・ウィアー「マチルダ・ザ ・ミュージカル」)を誘拐した犯罪グループ。目的も不明なまま、郊外の邸宅で待つ雇い主のランバート(ジャンカルロ・エスポジート「エレクトリック・ステイト」)の元に戻ると残された仕事として5000万もの身代金を手に入れるために少女の身柄を一晩監視する命を言い渡される。だが、この少女の正体はヴァンパイアであり、監禁されたのは誘拐犯たちだった!果たして24時間のサバイバルを誘拐犯たちは生き残ることができるのか!?
予告の段階からこれは楽しい映画!と劇場で観ようかな〜と思ってたんだけど、当時スケジュールがなかなか合わずに見送り、今回からアマプラでようやく観ました✌️
お話はあらすじの通り、ポスターに書いてある「誘拐した少女は、ヴァンパイアだった…」、もうほぼそのまんまな内容ww
だから、まぁ書くことがないっちゃないんだけど、じゃあ「月並みな」ジャンル映画かと言われれば全然そうじゃなくちゃんとオモロい(ジャンル映画ではあるけど)。
まずキャスティングの妙。なんといっても本作はやはり少女のヴァンパイア、アビゲイルを演じたアリーシャ・ウィアーがすごい。ぶっちゃけ向こうの顔立ちがめちゃ整ってる子役の中ではもちろんキュートではあるけど美少女…とまではいかないくらいの顔立ち…ではあるんだけど、彼女の魅力はいざヴァンパイアとしての本性を露わにして、哀れ犠牲となる誘拐犯たちの鮮血に塗れた際のなんともいえぬ恍惚とした表情にあると思う。まさに「鮮血の美学」、色気というか色「香」がある感じ。ちゃんと品がある。
ということもあり、なんつーか表情が豊かなんだよね。本性を露わにする前の怯える少女としての表情だったり、一転してそれが全て演技だった!とわかった際の嘲るような笑顔や立ち振る舞い、そしてヴァンパイアとしての大の大人複数人に対しても一切引けを取らぬ獰猛さ、その全てがものすごく上手い。
また、アビゲイルというキャラクターの特性上、オープニングから、一流のバレリーナとして豪華な劇場の舞台にもうこの年頃から立ってることがわかるんだけど、ヴァンパイアとして襲いかかってくるくだりでも、獣じみたパワープレイで襲いかかるシーンもあるっちゃあるけど、それ以上にバレリーナの持ち味である「優雅さ」や「舞」を取り入れた動きで迫り来る感じがものすごく新鮮。そしてそれを全てこのウィアーちゃんが軽やかな身のこなしでやってのけちゃってるからすごい!
調べたら、まだ未見だけど個人的に気になってた「マチルダ・ザ ・ミュージカル」の主人公役の子だったのか、あちらではミュージカルの主人公ということで確実に歌声を披露してるであろうことを予想すると歌って踊れるまさにエンターテイナーじゃんか!
また、そんなアビゲイルと命懸けのサバイバルを繰り広げることになる誘拐犯グループ「ラット・パック(ネズミ軍団)」の面々も個性豊か。タンクトップから溢れる巨乳に目が行きがちな元衛生兵ジョーイ(メリッサ・バレラ「スクリーム6」)、あの超イケメン俳優ダン・スティーヴンス(「ゴジラ×コング 新たなる帝国」)が超メガネ男子っぷりを披露する(終盤のある人物の鮮血によって血塗れメガネ姿を披露するシーンが最高すぎ)元刑事のフランク、他にもハッカー担当の金髪ゴス、サミーに「アントマン」や「名探偵ピカチュウ」のキャスリン・ニュートンがしれっと出てたり、ソシオパスの見るからにダウナーなヤバいドライバー、ディーン(アンガス・クラウド)だったり、割とこの中では没個性ながら、意外な形で退場するリックルズ(ウィリアム・キャトレット「サウザント・アンド・ワン」)などチームの個性としてもバランスも良い。
その中で個人的にお気に入りだったのはケヴィン・デュランド(「猿の惑星/キングダム」)演じるピーター。この俳優さん、名前は知らなくても主にアクションスター主演の映画の敵役とかでよく見る俳優さんなんだけど、今作ではまさにその巨体と筋肉に全振りしたおバカっぷりを発揮してめちゃくちゃ癒される。劇中では主にハッカーのサミーとコンビを組むことが多くてその過程で彼女と友情を築いていく中で見られる優しさなんかもあったりしてめちゃくちゃ良いキャラだった。
また、内容としても閉じ込められた豪邸内でヴァンパイア相手に命懸けのサバイバルという名の「鬼ごっこ」という、とにかく「ゲーム性」を前面に押し出したテイストがバッチシで、その中で誘拐犯の素性も誘拐した目的も不明のまま始まったこのゲームが実はアビゲイルの父親がそもそも政界すら影で操る都市伝説級のヤバい人物でこの誘拐犯たちが集められた理由ってのがそれぞれその父親の組織から恨みを買う行為をしてしまった人物たちであることがわかってきたり(序盤のプロファイリングシーンも面白かった!)、またアビゲイルに噛まれたサミーがヴァンパイア化しちゃってアビゲイルの遠隔操作によって襲いかかってきたり、終盤では、実はアビゲイルの手下側だった、最近出ずっぱりのジャンカルロ・エスポジート演じるランバートもヴァンパイアでそいつに噛まれて味方側だったフランクもヴァンパイア化しちゃって、最終的にはジョーイとアビゲイルがタッグを組んでラスボス、フランクと共闘したりと裏切りに次ぐ裏切りと意外な展開で飽きさせない!!
ラストも無駄にかっこいい感じで終わるし、いやぁジャンル映画という特性に甘んじない、ちゃんとしたキャスティングと内容でこれはかなり見てよかったなーと思える作品となりました。