麩

ナショナル・シアター・ライブ 2024 「ザ・モーティヴ&ザ・キュー」の麩のレビュー・感想・評価

3.7
演劇の奇跡が詰まった演劇だった!!!!!!!!!!!!
今まで観てきたナショナルシアターライブの中で一番良かった 選りすぐりの傑作選のなかの、わたし的最高傑作

久しぶりに神カンパニーを見た 戯曲 役者 演出
バックステージもの大好き人間として、バックステージものにありがちな誇張されたあるあるの詰まったドタバタ喜劇を楽しみにして行ったため、全然違うやん…こんな辛い気持ちになる予定じゃなかったのに…と一幕のラストシーン(素晴らしい)で心を握りつぶされる悲しみを味わっていたが
二幕冒頭から泣けるシーンの連続
もう常にグッとくる

「役者も演出家もスポンジだが役割が違う
持てる力を全て絞り出すのが役者だ」痺れる

男娼とギールグッドのハグ泣ける
ジョニーフリン、「“演技に目覚める俳優”の演技」を完璧にやっていてすごすぎる
「ワンスアポンアタイムインハリウッド」でレオナルドディカプリオも同じく「“演技に目覚める”演技」をやっていて震えたけど今作のジョニーフリンがその凄みを一段階上回る
これが舞台劇であの演技が1日2回繰り返されてるってことが信じられなさすぎる 

ぶつかり続けてこのまま作品ごと沈むかも…と思われていた2人がお互いの間に糸口を見つけて、成功への道に転がり出る瞬間の感動
役者と演出家がそれぞれに覚醒しその手応えを得ているこの瞬間、一瞬一瞬この瞬間は奇跡だっていうあのひとつぶひとつぶを必死に手繰り寄せる2人の表情、くぎづけ

どんな人間にもやはりその人間性をかたちづくる核となる出来事、人物がいて
粗野な外殻に包まれたバートンにとっての核があらわになったときものすごく彼を抱きしめたくなる

名優や名作の名前がポンポン出てきてずっと衝撃
いい時代ーー

時代や国が違っても、演出家と役者の関係性のなかでは、稽古場という場所ではこういうのってあるあるなんやね、、、と笑える部分もありつつ、彼らが魅せてくれる演劇の感動にひたすら揉まれまくる二幕
見て本当によかった

てか、良い劇場ってもう光と影だけで良いな
東京芸術劇場でモダンスイマーズ観た時も思った いい劇場にはいい光が差すしいい影が出るね 小屋の持つ力

モーティブ&キューという言葉の登場の仕方かっこよすぎた

二幕の冒頭にはさまれる、この舞台の演出家と脚本家の対談でもう泣ける
脚本家ジャックソーンの使う言葉がすごく好きだった、この人の戯曲は言葉がいいなーと思っていたけど当人の語りを見ててそのスピリットまで素敵だなととても共感する部分があった

初めてお芝居を見た人みたいなバカみたいな感想を久しぶりに持ってしまったが
この人たちが「リチャードバートン」「ジョンギールグッド」「エリザベステイラー」でなく役者であることが信じられないくらい、うまいお芝居でこんなことできるの?
てか毎ステージこれやってるわけ?怖すぎ


ナショナルシアターライブでは
「スカイライト」
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」
「イェルマ」
「みんな我が子」
「シラノドベルジュラック」
「リーマントリロジー」
「フリーバッグ」
「ライフオブパイ」
「ザ・モーティブ&ザ・キュー」
観ましたが、今作がダントツで良かった
期間中にもっかい行きたい
舞台の素晴らしさはその一回性にあると思っているから、観終わった後どんどん感動が自分からこぼれ落ちていって見返せない取り戻せないということを愛しているけれど
英国ナショナルシアターのさあ こんなにいい舞台をさあ 何回も観ていいなんてさあ
も〜〜〜 ありがとすぎ
また行くねー
麩