CHEBUNBUN

Keyke mahboobe man(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Keyke mahboobe man(原題)(2024年製作の映画)
3.7
【孤独を癒すため、タクシー運転手を家に招いた】
第74回ベルリン国際映画祭で『白い牛のバラッド』マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハの新作が上映された。イラン当局からパスポートが没収され、現地入りできなかった二人の新作はヒジャブを被らないと外を歩けない女性たちの抑圧に反発するような作品で、映画の大半がヒジャブなしで撮影されている。実際に観てみると、シネスイッチ銀座やBunkamuraル・シネマっぽい作品であった。

70歳のおばあちゃんマヒンは、一人暮らしをしている。友人にも恵まれ、家族ともスマホでコミュニケーションを取っているのだが、どこか寂しさを抱えている。そんなある日、アフタヌーンティー中にある男が気になる。その男はタクシー運転手だった。彼の後をついていき、ついに家に招く。そこで親密な対話が生まれる。マヒンは自由を求めている。外へ歩くときはヒジャブを身につけているが、ヒジャブが原因で警察に連行されそうになる人を見つけると、何か言わずにはいられない。そんな彼女の一夜の恋。ヒジャブを脱ぎ、ワインを交わす。同じく70歳のおじいさんとの対話は閉塞感あるイラン社会の片隅にあるユートピアのようだ。映画の大半は晩年のサタジット・レイ作品のように室内から出ない。しかしながら、ぐるっとカメラがパンをするとき、どことなく不気味さを感じるのである。シンプルな構図ながらも、観客を惹き込むカメラワークにより垣間見えるイラン社会を興味深く観たのであった。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN