ぶみ

パレードのぶみのレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
3.5
ここは、想いを残した者たちが集う場所。

藤井道人監督、長澤まさみ主演によるファンタジー。
未練を残してこの世を去った人々が集う世界を描く。
主人公となる新聞記者・美奈子を長澤、青年・アキラを坂口健太郎、ヤクザ・勝利を横浜流星、映画プロデューサー・マイケルをリリー・フランキー、バーのママ・かおりを寺島しのぶ、銀行マン・田中を田中哲司が演じているほか、森七菜、黒島結菜、中島歩、深川麻衣、でんでん、舘ひろし、北村有起哉、木野花、奥平大兼、高石あかりといったベテラン若手問わず、今の邦画界では欠かせないようなメンバーが集結。
物語は、瓦礫の山となっている浜辺で美奈子が目を覚ますシーンでスタート、程なくアキラや勝利、マイケル等と出会い、自身が既に亡くなっていることを知り、廃墟となったような遊園地を拠点として生活する姿が描かれるのだが、主人公は美奈子となってはいるものの、登場人物それぞれにエピソードが綴られるため、どちらかと言えば群像劇的な印象が強い。
何より、特筆すべきは、やはりその未練を残した者が集うという死後の世界観であり、そこを受け入れられるかどうかで本作品に対する評価が大きく変わると思われるのだが、いかにもなファンタジー表現は極力抑えられていたことから、ファンタジーが苦手な私でも、すんなりと入り込めたのは良かったポイント。
そんな死後の世界から移動する手段が、丸目のヘッドライトを装着して、昭和に活躍していたかなり古めのトヨタ・ハイエースのコミューターらしきクルマだったのは懐かしさを覚えたところ。
不思議だったのは、長澤や横浜、リリー・フランキー等は全く別の役名が与えられていたのに対し、田中哲司は田中、森七菜はナナと、そのまま役名になっていたキャストがあったことで、その意図は今ひとつ理解できず。
また、終盤に至って、現世と死後の世界を隔てる境界が、何だかあやふやになってしまっていたような気がしたのは、これまた私の読み取りが甘かったせいか。
反面、タイトルにもなっている月に一度死者たちが集い、会いたい人を捜すパレードのシーンの幻想的な美しさは、なかなかのクオリティであったたため、ここは是非ともスクリーンで観たかったかなと感じた次第。
また、廃墟系の構築物等に惹かれる私としては、舞台となった観覧車がある廃墟は、某有名スポットと思しき場所であったのに加え、マイケルが映画を上映した「星砂座」とされた映画館は、タナダユキ監督、高畑充希主演『浜の朝日の嘘つきどもと』で舞台となっていた「朝日座」と同じであったのにはテンション爆上がり。
派手さはなく、淡々とした雰囲気が続く中で伝えたいことは明確であると同時に、ここで浮き上がるのかという絶妙なタイミングのタイトルや映像美は雰囲気抜群であることから、この世界観をいかに受け入れるかが肝であるとともに、キャスト欄ではなく、「特別協力」としてクレジットされていたあの人が隠れキャラのようだった一作。

テレビは流れるもんだが、映画は残るもんだ。
ぶみ

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