ぶみ

青春18×2 君へと続く道のぶみのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.5
あの時、想いを伝えていたら、未来は変わっていただろうか。

ジミー・ライが上梓した紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』を、藤井道人監督、シュー・グァンハン、清原果耶主演により映像化した日本、台湾製作のドラマ。
かつて恋心を抱いた女性との初恋の記憶が蘇り、約束を果たすべく旅に出る主人公の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる台湾の高校生ジミーをグァンハン、日本から台湾に来たバックパッカーであるアミを清原が演じており、基本はこの二人がダブル主演として進行。
物語は、36歳になったジミーが、かつてアミから届いた手紙を手にしたことをきっかけに、台湾から日本へ旅する現代パートをベースとして、彼が18年前、カラオケ店でバイトをしていた当時、アミとの日々を綴った過去を回想するスタイルで展開するのだが、まあ何はともあれ、溢れんばかりにその魅力が伝わってくる主演二人と、台湾と日本のそれぞれの光景を溜息が出るくらい素晴らしく切り取った映像美に目を奪われることに。
特に日本では東京をスタートして、江ノ電に乗り鎌倉、長野の松本城、そして新潟から、豪雨による不通から一昨年全線復旧したJR只見線を使用してアミの故郷である福島へ向かう様子は、景色の変化、一期一会の出会いと、「旅は何が起こるかわからないから面白い」や「一休みはより長い旅のため」という作中にあるフレーズそのままに旅の面白さを示しており、ロードムービーとして文句なしの仕上がりとなっている。
そんな中、藤井監督作品にはもはや欠かせないと言える山中崇が冒頭登場するのを筆頭に、旅先でジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳等と出会うこととなり、皆出演シーンは多くないものの、それぞれ抜群の存在感を発揮していたのは流石の一言。
また、時代を端的に表すには今や携帯ガジェットを登場させるのが一番であるのだが、本作品でも過去パートがスマートフォン夜明け前の設定であり、私も昔使っていたスライド式のガラケーが登場していたのは懐かしく感じたと同時に、シーンが切り替わわり、iPhoneのアラーム音でジミーが目覚めた際には、それだけで現代パートなんだなと感じさせるものとなっており、その使い方に舌を巻いた次第。
クルマ好きの視点からすると、前述の松重が軽トラックを運転するシーンがあるのだが、スズキのキャリイかと思いきや、三菱のエンブレムが燦然と輝いていたため、キャリイの三菱版であるミニキャブトラックであったのは、何かスポンサー事情でもあったのかと一人ニヤついてしまったところ。
日本そして台湾の美しい景色を背景として繰り広げられるジミーとアミの物語に、否が応でも自身の18年前、そして18歳当時に重ね合わせることとなり、どうしようもなく郷愁をくすぐられ、その行く末と二人の一挙手一投足に目が離せなくなるとともに、Mr.Childrenのリアルタイム世代としては、彼らの楽曲が常に人生を彩ってきたことから、本作品のために書き下ろされた主題歌『記憶の旅人』が心に沁みるのに加え、ジミーとアミが同じ楽曲を聴くシーンでは、勝手に頭の中で彼らの1stシングル『君がいた夏』が脳内で補完されていた傑作。

そして今、その青春にサヨナラを告げる。
ぶみ

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