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パレードのknjmytnのレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
4.4
この世に生きたすべての人の、言語化も記録もされない、本人すら忘れてしまっているような些細な記憶。
そういうものが、その人の退場とともに失われてしまうということが、私には苦しくて仕方がない。
どこかの誰かがさっき食べたフライドポテトが美味しかったことも、道端で見た花をきれいだと思ったことも、ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい。
—— 『死ぬまでに行きたい海』「丹波篠山」岸本佐知子より

この一節を映像化したような映画。
美しい映像と切実な想いとともに。

煙が消えてなくなるのは、煙の元となる集合体が空気中に拡散して、目に見えなくなるまで薄まってしまうから。
でも見えたということは存在しているということ。

想いが結晶化する。
映画という形。小説という形。抱きしめるという形。見守るという形。
見えなくなって、いまはもう見ることができなくても、確かにそこにあって、僕らを包んでくれている。
そんなあたたまる愛を見せてくれる、素晴らしい映画だった。
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