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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのknjmytnのレビュー・感想・評価

5.0
すごい。
映画館で見たかった…けどそれでもすごい。

映像表現のセンス、半端ない。
マーベル社のコミックの画風の歴史を掘り返して、それをさらにアートや最新のデジタル表現とミックスし、世界中の地域別の美術やファッション、音楽、さまざまなカルチャーの歴史も織り込んでいる。

破綻してダサくなりそうなアイデアを、ここまで破綻なく、カッコよく、感動するクオリティにつくってるのやばすぎる。

あの天地の縛りから解放されて、ビルが空から生えているシーンの美しさ、センスエグい。
画角の切り取り方とか背景と人物の置き方とか、違和感なくできてるのすごすぎて、語彙力なくなる。

そして映像表現だけじゃなくて、ストーリーもすごい。
すごすぎ。

スパイダーマンとしてのフラグ。
物語として抑えるべきプロット(結果)にどう抗うかって、超現代的なテーマ。

みんなSNSとかでいろんな情報を浴びすぎて、これから起きるイベントや苦労や喜びをすでに知ってるみたいな人生を歩まされている。

すでに体験した奴とか、知った気になってるやつは“仕方ない”“必要なことだ”“もう知ってる”とか諦観して、抵抗することをやめさせようとしてくる。
その絶望感、退屈感、謎の達観が現代では漂いすぎている。

固有の人生を生きる。
昔は“史上初”とか“これまでにない”みたいな固有性が起きやすかった。
現代はそんな固有性はもう消失してしまって、みんな自分だけの何か、自分しかないオリジナルは何かみたいなことを必死に探り続けている。

でも自分でやった行為や頑張ったことの“結果”だけを見つめてしまうと、すでに流れている、すでに起きてしまったことをなぞっただけの絶望感に苦しめられる。

無数のスパイダーマンの世界の中で起きている悲劇に差異はないという絶望。
どれだけ個性を持っていても“スパイダーマン“として括られる絶望。

でもこの映画の超良いところはそのことを充分わかりながら、そこを描き、しかも結果が提示されないこと。
それでも、これだけの興奮と感動がある。
大切なのは結果じゃなくて、結果までに自分が何を決断し、どう苦労の海に飛び込んで、どう抵抗して、どう喜んで、どう感じているのかを見つめることの中に、人生の固有度の核、本当の面白さがあるって思える。

すでにわかっている、情報として存在していることに絶望せず、わかっている結果に対しても自分の意思で一歩踏み出すかけがえのなさを伝えてくれる。
超最高の映画だった。

どんな結末でも、この140分間で感じた興奮と感動を忘れずに、いろんなわかりきったことをやっていきたい。

次が超楽しみ!
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