kkkのk太郎

ツイスターズのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

ツイスターズ(2024年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

巨大竜巻の脅威と、それを追う「ストーム・チェイサー」たちの活躍を描いたディザスター映画『ツイスター』シリーズの第2作。

元ストーム・チェイサーの気象学者ケイトは、学生時代の仲間ハビに誘われ5年ぶりに竜巻追跡のためオクラホマ州へと出向く。そこで出会うのは、ユーチューバーとして活躍するストームチェイサーのタイラー。2人は反目し合いながらも徐々に絆を深めてゆくのだが、超巨大竜巻がオクラホマを襲う…。

人気ユーチューバーでもあるストームチェイサー、タイラー・オーウェンズを演じるのは『ダークナイト ライジング』『トップガン マーヴェリック』のグレン・パウエル。

制作総指揮はスティーブン・スピルバーグ。

28年という時を経て制作された『ツイスター』(1996)の続編という事になっているが、繋がりはほぼない。2作品に関係があるとすれば“ドロシー“という竜巻観測装置が登場する事、メタ的な視点では『ツイスター』の主人公ビルを演じたビル・パクストンの息子ジェームズ・パクストンが竜巻に吹っ飛ばされるモーテルの客としてカメオ出演している事くらいであり、本作は続編というよりはむしろリメイクという感覚で鑑賞するのが良いだろう。

監督は『ミナリ』(2020)で高い評価を受けたリー・アイザック・チョン。本シリーズの舞台となるオクラホマ州の隣、コロラド州デンバーの出身である。ちなみにタイラーを演じたグレン・パウエルは、これまたオクラホマ州の隣にあるテキサス州オースティンの出身。竜巻ネイティブによって、この映画は制作されているのである。

ホットパンツやタンクトップで駆けずり回る金髪美女という、ホラー映画では定番のムホホポイントを惜しげもなく描いている点は大変素晴らしい。絶世の美女デイジー・エドガー=ジョーンズと、トム・クルーズが保持し続けてきた軽薄ニヤケ面ポジションを見事に受け継いだグレン・パウエル。この2人が醸し出すケミストリーこそが、竜巻以上のインパクトを観客に与えてくれる。

濃密な人間ドラマを得意とするチョン監督らしく、大作ディザスタームービーでありながらそのタッチは繊細。登場人物たちの心情の機微が物語の推進力となっている。主人公ケイトとタイラー、そしてハビ。微妙な距離を保ちながら進展する三角関係には、恋愛映画の様な品の良さが感じられる。
その反面、竜巻という「怪獣」を扱ったジャンル映画として判断すると、本作は明らかに迫力不足。超巨大竜巻による破壊は描かれているし、ファイアートルネードという面白ガジェットも飛び出すが、それらをどこか一歩引いた目線で撮っているかのような冷静さが漂っている。映像技術は前作から格段に進歩している筈なのだが、残念ながら怪獣映画としては前作の足元にも及んでいないというのが実直な感想である。

「竜巻に無数の小型レーダーを吸い込ませる事でそのデータを取る」という前作の目的に対し、「吸水ポリマーを吸い込ませる事で竜巻を消滅させる」という本作の目的に現実味はない。
怪獣退治はジャンル映画の王道だが、実在する災害を扱ったこのシリーズでそこまで飛躍して良かったのかについては疑問も残る。続編なのだからその先を描かなければならないというのは理解出来るが…。
個人的には前作のオチが落とし所としての最適解だった様に思う。

『天空の城ラピュタ』(1986)のドーラ一家のような破天荒チェイサー軍団が登場する前作の方が間違いなく楽しい。ただ、今作は『フランケンシュタイン』(1931)が上映されていた事からも分かる様に、環境破壊や温暖化といった人間の所業が竜巻という怪物を生み出しているのだというテーゼが仄めかされている。前作から30年、竜巻という自然災害をただ映画のネタとして消費する事が許されない時代に突入したのだという事を感じずにはいられない。

丁寧な人間ドラマに環境問題への提言。チョン監督の真面目な性格が本作には大きく反映されている。その為、前作と比べてジャンル映画としての面白みが減った事は残念ながら事実。これはこれでありだとは思うのだが、せっかくディザスター映画を観ているのだからもっと突き抜けたバカバカしさを提供して欲しい。やはり『スピード』(1994)のヤン・デ・ボンと「ジュラシック・パーク」(1990)のマイケル・クライトンが組んだ前作は凄かったのだ。
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