kkkのk太郎

デス・レースのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

デス・レース(2008年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

ディストピアと化した近未来で行われる死のレースを描いたカーアクション映画『デス・レース2000年』(1975)をリメイクした『デス・レース』シリーズの第1作。

財政破綻により刑務所が民営化した近未来のアメリカ。ターミナル島刑務所では囚人たちが命懸けのレースを繰り広げており、それは全米に中継されて国民的な人気を誇っていた。
元レーサーのジェンセンは、妻殺しの罪を着せられターミナル島へと収監される。刑務所長のクレアは、彼を覆面人気レーサー「フランケンシュタイン」の替え玉としてレースに参加させる…。

主人公であるジェンセン・エイムズを演じるのは『スナッチ』や『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサム。
フランケンシュタインのライバル、マシンガン・ジョーを演じるのは『ワイルド・スピード X2』『トランスフォーマー』のタイリース・ギブソン。

不遇時代のスタローンが出演している事でも知られるカルト映画『デス・レース2000年』を、今やスライの後継者との呼び声も高いアクションスター、ジェイソン・ステイサムを主演に迎え、装いも新たにリメイク…なのかこれ?
引き継がれているのはフランケンシュタインの設定とマシンガン・ジョーという名前くらいのもので、あとは時代感から舞台設定、レースの内容までガラリと変わってしまっている。

オリジナルのブラック・コメディを取り外し、代わりに00年代らしいダーク・アクションを搭載。セクシーなチャンネーを侍らせ、騒々しいBGMを鳴り響かせながら車をかっ飛ばすヤンチャさはまるで『ワイルド・スピード』(2001-)のようである。ステイサムとタイリース、出演者まで『ワイスピ』。もうこれ普通に『ワイスピ』だろ…。
ただ、ステイサムが初登場する『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013)よりも本作の方が公開年は早い。本作を見たヴィン・ディーゼルが「ステイサム良いじゃん。シリーズに呼ぼう!」とか言い出した可能性も、無きにしも非ずか?

ステイサム&タイリースのワイスピ組にはやはり華があり、彼らの活躍を見ているだけでそれなりには満足する。巨大モンスタートレーラーとのバトルなんかは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の先駆けといった感じで、その迫力ある映像に普通に感心してしまった。ゴア表現も頑張っているし、口汚く罵るような出来の作品ではない。
ただまぁ、良くも悪くも大味のアクション映画。まるでテレビゲームのようなレースシーンは繰り返しが多い上にロケーションが変わらないので直ぐに飽きが来るし、妻を殺されたばかりの主人公に葛藤や苦悩の影が微塵も見えないなど人物描写もお粗末。そりゃポール・W・S・アンダーソン監督に過度な期待はしていないものの、もう少し工夫を見せて欲しかったところである。

B級映画の帝王、ロジャー・コーマンが生み出した偉大(?)な初代『デス・レース』。バカバカしい作風の奥底でキラリと光る風刺性や、観るものをドン引きさせるギャグセンスなど、出来はともかくオリジナリティに溢れた作品だった。それらの要素を捨て『ワイスピ』の模倣に走った本作を高く評価する事は出来ないが、まぁこのくらいのちょうど良い娯楽映画も世の中には必要なのです🙆
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