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成功したオタクのarchのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
3.3
よく整理されたセルフドキュメンタリー。
自分と同じく裏切られたファンの十人十色な心理や意見を介して、自身の気持ちの整理をしていき、映画としての結末にたどり着く。言ってしまえば珍しくもないものではあるけど、ちゃんとそこにたどり着く過程が撮れているから、成立している。

また彼女には、他のファン以上の"撮る理由"があるのも良い。彼女自体がファンとして有名で、そのイメージが自身についてるが故に、単にファンを辞める訳には行かなかった、だから自分にカメラを向けたという動機付けができているのが実は大事だ。

ファン心理は複雑である。ミソジニー強まる家父長制社会の韓国において信じてたアイドルが性犯罪者となったとき、多分日本国内以上のキャンセルとファンの怒りが起こるはずだろう。その怒りは性犯罪についてもそうだが、何より掛けてきた時間やリソースが無駄になり、注いできた想いを裏切られたことへ向けられるものだ。しかしファンだった時代、確かに幸せだった時間はあって、楽しかった「思い出」は嘘にはならない。その簡単には解決しない二律背反の感情にそもそもなんで挟まれないといけないのか。
皆その感情にある種回答をみつけ、断固とした立場でカメラに発言する。この映画が中庸な答えに落ち着くのに対して、それぞれが断固とした結論を持っているのが印象深い。

母親との下りはちょっとダレ気味だが、セルフドキュメンタリーとしては必要だった。そこにファンについてのドキュメンタリーとセルフドキュメンタリーの歪みが生まれていたように思う。
よく出来たセルフドキュメンタリーだった。
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