NG

成功したオタクのNGのネタバレレビュー・内容・結末

成功したオタク(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます


アイドルという生身の人間に依存し、じぶんの人生を捧げる"推し活"と呼ばれる不健全な生き方や韓国アイドル業界の闇について問題提起するためというよりかは彼女たちの中で答えの出ない問題を〈話す〉ことで執着心を〈離す〉セルフケアが目的の映画だったように思う。

実際に推しが犯罪者になった方がインタビューで「正直あまり驚かなかったし、驚きがなかったことがショックだった。推しの言動や行動を見ていればなんとなくわかる。すきだから。そういうことをするかもしれないという危うさは感じていた」と語り、本作の監督でもあるオ・セヨン氏が「薄々その危うさに気づきながらそれらを見逃し、彼らを調子に乗らせたわたしたち(オタク)にも責任があるのではないか」とまとめていたのが印象深い。

すきだから、一挙手一投足に目を配る。すきだから、言葉に出来ないような些細な変化や違和感に気づいてしまう。それはほんとうにそうで、そんな違和感や危うさに気づいていながらそれらを見逃し、彼らをチヤホヤし続け、調子に乗らせてしまったのでは?という罪悪感を抱いてしまうのもわかる気がした。

また、別のファンの方が「アイドルの給料はわたしたちがアルバムを買ったお金から支払われているでしょう?誰がそのお金で馬鹿みたいに酒を飲んで、そんなことをしろと言った?恩には恩で返すべきなのにそれをこんな形で返すなんて」と強い口調で非難していたけれど、その発言からじぶんたちの支払ったお金が性加害の資金になってしまっていたことに対する自責の念や、間接的に犯罪に巻き込まれていたことに対する深い悲しみを感じ、胸が苦しくなった。

数多くの女性ファンに支えられているはずの男性アイドルがファンに「愛している」と囁くのとおなじ声で女性を脅し、尊厳を踏みにじっていた事実。ファンが与えてくれたお金を犯罪に使うこと、間接的に事件に巻き込むことに抵抗はなかったのか。そもそも最初からファンなんてどうでもよかったんじゃないか。発覚したらすべてを失うとは考えなかったのか。わたしたちが一緒に見ていたはずの夢も、これまでの努力も、そんなことのために捨てられるようなものだったのだろうかなんてことをいやでも考えさせられてしまう。

そして、わたしたちもまた被害者/加害者であると深く傷つき落ち込み「わたしたちにも責任があるのではないか」とまで言っていたファンもみんな結局また別の推しを作って"推し活"しているのだからなんていうかほんとうにオタクって業が深い生き物だなー‥と思うなどした。
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