今回鑑賞した限りでは、霊との交信、そして、解放が主題なのかな、と解釈したものの、視点がうまく定まらない作品だった。時間をおいて、自分が本作から何を受け取ったのか、改めて考えてみたい。
(1) シドニの視点から捉えた作品と解釈すると、内面描写が物足りなく感じ、健三とシドニまたはアントワーヌとシドニの関係性を主軸に据えた作品と捉えたとしても、消化不良だった。
(2) 言葉(母語)をある意味で喪失する空間だからこそ、作家としての言葉をまた回復するという構造。言葉を喪失する空間だからこそ、霊との交信がよりリアリティを増すという構造。感受性を拓く空間としての《非日常》を、日本への旅がつくりだしている、という演出に感じた。