入江悠監督で、垣根涼介原作だから、反骨精神ある作品になるだろうとは期待していた。
昨年で言えば「十一人の賊軍」という佳作があったことだし、時代劇とはいえ、まさに今現在の写し絵「格差と貧困の放置」「政治の無為無策」「弱肉強食的世界観」となりうるだけに、期待値は高まっていた。
しかし、まあ、面白くないこともないのだけれど「ちょっと違うかなあ」という印象だった。
その「ちょっと違う」感じだけ書いておきたい。
① 登場人物のしゃべりが「いわゆる時代劇ってこんな感じでし ょ」というイメージ。「○○○○じゃ」「××××じゃ」と、「じゃ」を付けておけば時代劇になる、と思って作られている(いや、作り手はそんなつもりではなく、いろいろな考えがあるのかも知れないが)ように感じて、終始「うざったい」感じがした。
② どこまで「世の中」「現実」を撃つつもりがあるのか、という点が不明確。
悪い奴がただ単に悪い、間抜け、としか見えず、北村一輝にしても、中村蒼にしても、なんか無駄遣いとしか見えない。
人々が苦しむ原点がきちんと描かれてこそ、反逆と、終盤の「一期は夢よ、ただ狂え」という叫びが真摯に響いてくると思うのだが、しょせんエンタテインメントの約束事としての民の苦しみと怒り、にしか見えない。
③ 一番肝心の「京の街を焼き払う」戦いが、夜間なので、せっかくの群衆シーンも、個々の戦いのシーンもよく見えず、底に力点があるのかないのかよく分からなかった。
ストーリー的には、その後、大反乱が終わってからの明け方の戦いの方がくっきり見えて、面白いのだが(特に長尾謙杜のアクション描写は洗練されてない分、無頼っぽくてよかった)、さらにその後に主役二人の戦いがあり、これはまた妙にあっさりしていて、どうにも「どこがクライマックスなんですか?」と感じてしまった。
(これはそもそも長すぎるってことか・・)
前半の長尾謙杜が柄本明に鍛えられるシーンとか、大泉洋が、従来のイメージと少し違う(とは言ってもススキの探偵シリーズとか好きだったけど)ハードボイルドヒーローをやってるのも面白かったり、よい点も多いのだが、プラマイするとマイナスが少し目立ってしまう、そんな印象だった。
(ラストに「歴史上の事実」みたいなことがサラリと描かれるのは実に東映のシリアス系の時代劇っぽくて好きだった。)