Lilly

遠すぎた橋のLillyのレビュー・感想・評価

遠すぎた橋(1977年製作の映画)
3.6
ノルマンディ上陸作戦から数ヶ月後、オランダベルギーに渡る主要な橋5つを、ドイツ軍から奪還し、優勢に持ち込まんとするマーケットガーデン作戦を描いた。

ノルマンディ上陸作戦は、かなり周到に綿密に練り上げられたのに対して、この作戦は短期間で、しかも、万が一や最悪事態を想定するのを避けたかのような無謀な作戦だったようだ。

連合軍参謀、空挺師団、歩兵部団、装甲師団、レジスタンス市民など、様々な立ち位置の群像劇。(俳優も有名どころを集めて、見応えがある)
 
こんな無謀な作戦に組み込まれた軍人達の不運を、今更ながら気の毒に思う。

各師団を繋ぐ無線は、機能せず、
連合軍、ドイツ軍共に、参謀クラスの軍人が、下っ端軍人や市井レジスタンスが苦労して得た機密情報を、信じない、活かさない、無能ぶりを発揮するあたり、悲惨過ぎる。

いつの時代も、TOPの人間が無能だと部下や下々の民は辛酸を舐める事になるのだ。

上層部の司令が、戦地現状とズレていて、痒いところに手が届かぬ歯痒さ。

戦争は常に何らかの大義があって、始まるのだか、「終わらせるのがいかに難しいか」と感じる。作戦を中断したり辞める勇気を持つ、その先見性を持たない人間は、軍部参謀になるべきではないと思う。
あれだけの死傷者を出し、得た成果は何だったのだろう?
個人的には、自宅を連合軍に接収されたホルスト夫人が、印象的だった。彼女の目が忘れられない。あの利発なレジスタンス少年も。

戦争がいかに無益で、美しい街や田園風景、自然をぶち壊すか、そして人間の命、尊厳をうばうか、見せつけられた。
Lilly

Lilly