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愛に乱暴のHiiiのネタバレレビュー・内容・結末

愛に乱暴(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作が吉田修一なのと江口のりこが主演ってとこにすごく惹かれる。

まず、江口のりこが持つ独特な魅力が桃子という役にピッタリで、ストレスを溜めながらも自分を押し殺しチェーンソーや土の匂いを嗅ぐときの何とも言えない表情を見入ってしまう。

そして、目線も節目がちだし空っぽなクズ男を演じるイメージがなく、夫役が小泉孝太郎だということにエンドロールまで気付かなかった!あの人あんな演技も出来るんだという驚き。

桃子が抱える周りからの疎外感や孤独について、自分自身と重ねてしまう点が幾つかあった。キャリアを捨てて仕事を辞め家庭に入り何者でもなくなり社会から取り残され、なかなか子どもを授かれず周りから取り残されていく感じが女性特有の孤立してゆく孤独。(私もなかなか子どもに恵まれなくて、結婚して長く勤めた仕事を辞めて引っ越し転職したりして、結婚する前より世界が狭まってしまった感じと疎外感を感じることがある。)状況は違えど私と同じく桃子と自分を、どこか少し重ねてしまう女性は数多く居ると思う。

桃子は夫にも心を寄り添ってもらえない。(ここは私とは違うけど)
なかなか別れを承諾できなかったのは、せっかく掴んだ結婚だったからと、自分を犠牲にしてまで守ろうと決めたものが何もなくなってしまうのが嫌だったのかも。
彼はきっとまた同じように飽きたら刺激を求めて繰り返すだろう…私だったらいくら好きでも繰り返すのが目に見えてるから絶対結婚しない。

手の込んだ料理を作ったりきちんとした丁寧な暮らしが窮屈だったのか、社会との関わりが少なくなり結婚して家のことばかりになり夫が会話がつまらなく感じ無関心になってしまったのか…。自分も割と丁寧な暮らしを心掛けていてスペアリブ煮たばかりだし、まだ子どもが居ないので夫婦の会話で今後飽きられないか最近ふと不安に思ったことがあったので桃子と自分を重ねてしまった。桃子の様に夫に女の影があったり直接愛がないことを告げられ、浮気相手が妊娠なんてことになったら、私だって心がきっと壊れてしまうだろう。

物語が進むにつれて伏線回収されていき、過去のことが何となく見えてきて、浮気相手のものだと思っていたSNSは過去の自分であることなどが何となく読めてくると一概に可哀想だと思えない主人公の報われない心の闇を感じられるのも良い。

原作も気になるから読んでみたい。どうやら床下にこだわった謎や、あの家の離れの謎について、あの離れを義母が手放した理由などにもちゃんと意味があるみたい。

映画自体は主人公をちゃんと見ていてくれる人がいたという、救いとなる前向きなシーンがあって良かったけど、原作はどうなんだろう。

結構好きな作品だった。
Hiii

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