ちろる

天城越えのちろるのレビュー・感想・評価

天城越え(1983年製作の映画)
3.8
ゾッとするほどに田中裕子さんが美しくて色っぽい。
色っぽいというよりむしろエロい。
原作は未読。いくつか観てきた松本清張シリーズの中でも俄然エロスが溢れ出てる作品な気がします。
14歳という少年と青年の狭間で、あの天城峠を一人で超えた時、あんな妖艶な女に出会ってしまったなら自我とともに恋の炎と性の欲望が同時に生まれてしまうのも無理はない。
擦り切れた足の血を丹念に拭き取り唾液で濡らした布で覆う。
「あらこんなになるまで放っておいて、、」
「我慢してたなんてむっつり助平ね。」
だなんて意図的なのか偶然なのか分からないけど、少年に生まれた慕情に火をつけるには十分すぎた。
ハナに罪があるとすれば、それはきっと艶めかしすぎた事だろう。
捕まったハナが少年に投げかけた言葉とその笑みはまるで菩薩のように美しくて、全ての後ろめたいことがある人間の黒い渦を吸い取ってしまうような魔力さえ感じてしまう。
サスペンスとして秀作というわけではないのだけど、兎にも角にも田中裕子さんが素晴らしすぎる。
どっぷり彼女にはまれる作品である。
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