びらびらマン

ぼくのお日さまのびらびらマンのレビュー・感想・評価

ぼくのお日さま(2024年製作の映画)
4.5
いい作品よ、これは。長編監督作2作目でカンヌはタランティーノかよ!痺れます。

演出、脚本共に素晴らしく、日の光によるライティングと登場人物にとっての「お日さま、希望」の写し方が美しい。中でもコーチ荒川の目に映るタクヤがお日さまの光を背にしてスケートリンクを滑るシーン、逆にさくらにはお日さまの光を当てずに暗く演出する等、緻密な脚本中に計算された画作りがあり、全編を通しての異常な納得感がありました。

また、音楽の使い方についても演出と脚本についての噛み合いを強く感じた。音楽自体が映画とは切っても切り離せない存在なのですがフィギュアスケートという題材だからこそ「月の光」という曲をここまで必然的に、自然に使用できると感じた。中でも初めてコーチ荒川とタクヤがリンクで月の光に合わせて踊るシーンは本当に美しい。

その他にも、初めてコーチ、タクヤ、さくらがスケートリンク上で三角形になりそれぞれに違う人物を見つめるシーンがその後の展開を示唆している点、「男らしさ」というセクシュアリティを友達や家庭で強要されているタクヤがフィギュアスケートに惹かれる必然性、ラストのキャッチボールのシーンで拒絶されたコーチのタクヤに対する含みのある「ごめん」を(おそらくですが)エンドロール前に切られているであろう「ありがとう」で包み込む優しさであったり、本当に丁寧に脚本と演出を合わせているなと思いました。先ほども書いたのですが、そのおかげで全編を通しての登場人物の心情の流れに対する納得感が凄まじかった。

また、ワンショットワンショットの画に対する拘りはパンフレットにも記載ありますが、ノスタルジーと新しさが共存する画作りで、素晴らしい脚本が抜きにしても画だけで作品に浸れる映画でした、、