honobon

ぼくのお日さまのhonobonのレビュー・感想・評価

ぼくのお日さま(2024年製作の映画)
4.8
泣きたきゃ泣けばいいさ。

雪が振り始めたとき、野球ができなくなる。雪が解けたとき……
今ではないだろう、いつかの青と緑に囲まれた北国。奥山大史のカメラワークから映し出される3人の眼差し、そして、ふたりの眼差しと添えられる光の加減。

タクヤはスケートを始める。理由なんて、なんでもいい。
ホッケー靴でスピンをしようとする、うまくいかない。あの光景、好き。

さくらは2人でアイスダンスを始める。
突然コーチに言われたなんて、知らなくてもいい。

荒川はふたりの可能性を信じて教え始める。
ふたりの可能性をコーチとして。

五十嵐は荒川から久しぶりに聞いたスケートの話を聞く。微かな喜びを胸に。

それぞれの"お日さま"が誰も何も話し出すことなく、自然光が語りかけるように物語を紡いでいく。

とても優しく、とてもほろ苦い。そしてとても心地よく裏切られる。
ラストカット、ニヤッとなれるオープンエンディングな終わり方からくるこの作品の種明かしはぼろぼろ泣いていた。

オープンエンディングの作品を見たとき、スタッフロールを見ながらいくつかのパターンをイメージして目を追っているのに、この作品は全て吹き飛ばされてしまうほどタダタクヤくんが笑顔になっている、そしてまた荒川に何処かで再会していることしか想えない。


今ではアイスダンスという"カテゴリー"の存在も、LGBTQの"認知としての理解"も認知されるようになっているけれど、少なくとも10年(以上)前を思うと。という内容にもなっている。
キャシー&クリスのあたりかな?なんて思って、悲しくなる。

そして、パンフレットの前日談が素晴らしすぎてキャラクター設定があっての本編であることを実感する。
honobon

honobon