2024.09.14
池松壮亮&若葉竜也出演作品。
第77回カンヌ国際映画祭への選出作品では唯一の日本製作出品で、「ある視点」部門にて上映され、スタンディングオベーションを浴びたとのこと。
受賞こそ逃しましたが、これは期待してもいいのではないでしょうか。
奥山大史監督は今作で商業映画デビュー。
雪が降るまでは野球、雪が降り積もる頃はホッケーを習う小学生のタクヤ。
どちらも得意ではないタクヤは、同じリンクでフィギュアスケートを練習するさくらの姿に目を奪われる。
自分でフィギュアスケートの練習を始めたタクヤの姿はさくらのコーチ・荒川の目に留まり、リンクの閉館後まで指導をしてくれるように。
やがて、荒川の発案により、タクヤとさくらの2人でアイスダンスに挑戦することとなるー。
こ〜れは大好きな雰囲気の作品ですね。
特に印象に残ったのは光彩と音です。
まず光彩の方に関しては、『お日さま』の名の通り陽の光が印象的で、外で浴びる光ではなく、窓を通してリンクに差し込む淡い光が、タクヤ、さくら、荒川の不思議で儚い関係性を照らしており、その光が優しければ優しいほど、その光の無い場面の不穏さが際立っていました。
音の方は、タクヤとさくらが踊る際のBGMとしての「月と光」が作品全体のBGMとして優しく包み込んでいました。
そのマッチ具合がハンパなくて、それと対比するかのように、序盤でタクヤが苦手なホッケーをすることとフィギュアスケートに憧れることとの齟齬を表すために、リンクをブレードが削る音を不協和音として機能させていたと思います。
男の子がやるような野球やホッケーよりも女の子がやるようなフィギュアスケートに憧れるタクヤ、きっかけこそ定かではありませんでしたが、続ける動機は荒川への淡い恋心だったのではないかと思えるさくら、そして選手だった頃の夢と、自分の居場所を確信したい願いを2人に託しているような荒川、三人の関係性も見ていて飽きない、ずっと見ていたいと思わせてくるものでした。
このメイン三人以外にも、タクヤとさくらがそれぞれの友達と一緒に過ごしている描写、荒川と五十嵐が同棲している描写も挿入されており、深掘り、とまではいかなくても、人物描写としてとても良かったです。
終わり方については、少年少女らしい大人ぶった幼稚な嫉妬心と閉塞的な価値観により、少々ビターな部分もありました。
しかし、溶けて無くなってしまう雪とは逆に、三人で過ごした“一冬”の思い出は、これからも3人の中に残っていって欲しいですね。
それに、ラストでタクヤがさくらに何を言おうとしたのか、それによって残された二人の将来に対して想いを馳せられる部分もあるのかと思いました。