天豆てんまめ

幕末太陽傳の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.1
この映画のエネルギーは凄い。

60年近く前の映画だけど、デジタルリマスターになって白黒ならではの陰影の美しさが映えて古びた感じがせずリアルに眼前に迫ってくる。

日本って、日本映画界ってそんなに元気があったのか。こんなエネルギッシュな映画、時代がそこにあったのかとある意味、唖然とするのではなかろうか。

以前のキネマ旬報のオールタイム邦画ランクでは「七人の侍」「東京物語」「浮雲」に次ぐ4位だったが、大袈裟ではなく、日本映画黄金時代の勢いの良さがギュギュっと詰まっている傑作といえよう。

幕末の頃、品川遊郭での大名遊びの派手さ加減が面白い。無銭飲食男の佐平次役のフランキー堺がやりたい放題。でも、憎めない。そのまま遊郭に住み着いて、番頭やって次々と難題解決。ストーリーはオリジナルだが、落語や有名な逸話を組み合わせて波乱万丈のコメディ人情劇の脚本が見事。高杉晋作役の石原裕次郎も初々しく、南田洋子がとっても可愛らしい。

黒澤、小津、成瀬、溝口もいいけれど、45歳で亡くなった川島雄三監督はその時代に見事に美しい花火を打ち上げた天才監督だと思う。